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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 355

有馬記念でやられたのと自分が乗って勝っていた経験から大舞台でのイナリワンの怖さは嫌と言う程分かっている。
恐らくだが、彼は大舞台と言うのを理解して走っている気がしていて、オグリキャップと違う方向での怪物だろうと見ていた。

だが、悠はクリークも彼らに匹敵する怪物だと思っていた。
昨年のジャパンカップと有馬記念こそ負けはしたが、その頃よりクリークと息が合うようになってきている。
その集大成と言えるのが前走の大阪杯だった感はある。

それに悠自身も調子が良い。
今年もリーディングトップを快走中だが、自分でも今までより乗れている感がある。
騎乗スタイルが澪に似てきたと言われる事もあるが、それは意識して取り入れている部分でもある。
天才型と言われる澪だが、騎乗スタイル的には田沢を真似ただけあってしっかりした技術に基づいている。
技術言うベースがあるからこそ、馬に対する柔らかさや勝負での閃きが生きてくる訳だ。

それらは澪を側で見て感じた事や、結婚後の会話等から吸収したものだ。

殆ど競馬関係の話しかない夫婦だが、本人達はそれが楽しいようだ。

そして、先週ぐらいから出産後のセックス解禁となったのだが・・・
出産後の澪の具合がすこぶる良くなっていて、毎日結構やってしまっている。
澪自信は騎手復帰に向けてトレーニングもしたいようだが、具合の良さに悠が求め過ぎていてすぐに次の子供が出来そうな雰囲気だ。
更に言えば解禁後の週末の悠の成績が凄い数字だっただけに、澪も半ば諦め気味になってる所もあった。
無論、彼女自身も産後が大変過ぎて鬱っぽくなっているのがセックスで解消されている感があるし、単純に気持ち良いのでヤリたいと言うのもある。

そんな感じで絶好調で挑む悠と、天皇賞に向けて万全の仕上げのクリーク。
クリークの仕上がりは生涯最高と言っていいぐらいの出来で、ここを使って秋は欧州遠征も仁藤と樹里が話し合っているのを悠も聞いている。
そうなれば悠にとっても本場で乗れる大きな機会だ。
イナリワンの勝利のご褒美で、去年はアメリカで競馬できた経験があるが、本場のヨーロッパはまだだ。

日本の若き天才として欧州の有力厩舎からも注目されており、そこでの技術吸収もしたいと悠は考えている。

3200mの長丁場。
レースはショウリテンユウが好スタートを決めハナに立つところを、松中に乗り替わったミスターシクレノンが前走同様の逃げに持ち込むべく並んでいく。
クリークはすんなり3番手のポジションを取り、その後ろにカシマウイング。
イナリワンは真ん中からやや後方。

これは想定通り。
良いスタートを切れたと自画自賛してもいいぐらいだ。
クリークも気分良く走っているし、こちらに素直に従っている。
長丁場のレースになるが、ペースも良くこれなら勝てると思いながら一周目のスタンド前に入る。

そのスタンド前。
後方からの競馬となったイナリワンは不気味なぐらい落ち着き払っていた。
これには柴原もニヤつく。
普段は制御できないぐらいの暴れん坊が、こと大舞台となると別の馬のように落ち着き払う。
これがイナリワンが怪物と呼べる所以であり、柴原も惚れ込んだ馬だ。
大歓声のスタンドにも動揺する事無く、ひたすら落ち着いている。

「じゃあ、勝たねえとな」

そう語りかけると、イナリワンが分かっているさ相棒と返してきている気がしていた。
恐らく前を走るクリークがレースをコントロールするだろう。
だが、昨年末の有馬記念のようにイナリワンなら捉まえられる確信が柴原にはあった。

ミスターシクレノンが逃げる形となり、ゆったりとした展開を作り出す。
前走で逃げを試したことがいい方に出ているのかもしれない。

クリークはそれを見ながらの3番手。
前走でミスターシクレノンに騎乗して逃げに持ち込んだ張本人である悠は当然この馬が行くと見てレースを進める。
最後に捉える為に必要なのはこのポジションだ。

向こう正面までは落ち着いた展開でレースは進んでいく。

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