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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 353

アグネスレディはその河井によってオークスを制覇。
そして自身が勝てなかった桜花賞を制する為に考え抜かれた配合の上で生まれたのがアグネスフローラだった。
つまりアグネスフローラは河井にとっても、オーナーの渡利にとっても悲願の結晶なのである。

ただ上位二頭の人気が大きい事もあって、かなり離された3番人気に甘んじているが陣営はそれすら意気込みに変わっていたぐらいだ。
そんな意気込みを受けて河井も気合いが乗らない筈は無かった。


レースは悠のアクアパッツァが好スタート。
重馬場と言う事もあり、無理はしない方針だが追いかけてくる馬はいないと考えていた。
だが、その目論みは直ぐに消えた。

コスモアイドル、サクラサエズリ、レガシーワイズが猛然とアクアパッツァに並びかけてきたのだ。
悠にとっては計算外だったが、仕方ない。
その3頭に先を譲って無理をしない戦術を取る。
逃げたかったのだが、こればかりは仕方ないだろう。

ディザイアはそこまで良いスタートとは言えず、外枠もあって後方集団。
前にはエイシンサニー、後ろにはイクノディクタスと言う配置。
アグネスフローラは中団8番手辺りであった。

前半1000m通過が58秒7。
競りかけてくる展開で悠の想定より速いペースで流れている。
単騎で行けたら良いのがベターだったが、これなら控えた方が良かったかもしれない…
悠は気持ちを切り替えようとしていた。

ところが、3コーナーで思いもよらない事態が発生する。
先行した中の1頭、レガシーワイスが故障発生で転倒。
すぐ後ろにいたアクアパッツァは大きな不利を受ける。
悠はなんとか踏ん張って堪えたが、さらに後方にいたスイートミトゥーナが巻き添えを食らってしまい、鞍上の千葉が落馬。

アクシデントにスタンドが騒然となる。

不利を受けたアクアパッツァはズルズルと後退。
無論、後ろの馬も影響はあり、ディザイアも大きく外に振られてしまう。
そんな状況でアクアパッツァは中団後ろまで位置を下げて直線へ。
ディザイアも中団まで詰めたものの、大外に振られてしまっていた。

そこから追い直すアクアパッツァ。
先行勢は不利の影響で全てが失速。
アクアパッツァも追い込み勢に混じっての叩き合いとなる。
ディザイアは鋭く伸びるが、余りに外に回らされ過ぎていた。

そんな中で混戦から抜け出したのは、アグネスフローラだった。
不利を受けて外に回らせられたものの、比較的内側に残せた事で立ち上がりで先手を取れた。
その機を名手河井は逃さなかった。
一気に混戦から抜け出し先頭に立つ。
必死に巻き直すアクアパッツァだが、不利からの再加速は難しい。
それでもまるで追い込み馬のような瞬発力で追い縋る。
ディザイアもいつもの切れ味を見せるが、直線立ち上がりで遅れたハンデが重くのしかかる。

先に抜けたアグネスフローラを必死に追うアクアパッツァとディザイア。
しかし道中の不利の影響は大きく最後には脚色がいっぱいになってしまう。

アグネスフローラが母の無念を晴らす桜の頂を掴む。
そこから1馬身差の2着争いがアクアパッツァとディザイア。
悠も松中も悔しい気持ちはあったが、これもレースなのだと思い知る。

3位のアクアパッツァと悠。
この不利は誰が悪い訳でも無い。
怒りのぶつけ所が無いが、こればかりは仕方ない。
ただ幸いと言うか、アクアパッツァに怪我などは無かった。
故に寛子は距離適性を鑑みて、次走をNHKマイルカップに定めたのだ。

そして2位のディザイア。
勝てはしなかったが、よく頑張った。
距離延長して良い所が出るであろうから、次走はオークスへ。
そこでアグネスフローラと再戦する事になる。

「まあ、無事で何よりだわ」

レースで事故があれば、例え他人の管理馬でも安否は気になるし、自分の管理馬が無事ならホッとする。
当事者の悠は怒りのぶつけ所がなくて不機嫌だろうが、それに関しては慰めてやる事ぐらいしかできない。
まあ、家に帰って妻子の顔を見れば気も晴れるだろうと、少し軽く考えながらも寛子は悠の元に向かったのだった。



涼風ファームでは、去年空胎だったアキネバーが早くもフケ(発情)が来たので、予定通りサクラスターオーの初種付けを行う事になった。

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