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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 350

最内にいた逃げ馬が垂れて後退していく。
先頭に立つスーパークリークにオサイチジョージ、ヤエノムテキの2頭が一瞬横並びになる。
内側で先行していたシナノジョージとマヤノオリンピア、さらには最後方からまくってきたシーキャリアーと、先団がひと固まりになる。

直線へ。
先頭のスーパークリークにオサイチジョージが必死に追って迫ろうとする。
じりじりと差を詰めようとするが、クリークはまだまだ余裕だ。

オサイチジョージもヤエノムテキも必死で追う。
だが、クリークとの差は一向に縮まらない。
勿論悠もクリークを追うが、どこか余裕があった。
そのまま先頭でゴール。
内容は危なげない完勝と言って良かった。

何より、今まで以上に人馬の一体感を感じれたレースだった。
勝ったことより、その事に充実感がある。
無論、澪が言うような馬との会話ができたかはわからないが、意思疎通はできている気がした。

次走は春の天皇賞。
有馬で差し切られたイナリワンとの再戦となるだろう。
だが、悠はこのレースで相当な手応えを感じていたのだ。



涼風ファームでは入厩前の2歳馬が最後の仕上げ段階に入っていた。
ウラカワミユキの88は物覚えの良い優等生で、この世代で一番の有望株。
故にナイスネイチャと名付けられ、もういつでも入厩できる状態まで仕上がっていた。

そのナイスネイチャと変わらぬ素質と言われながら手こずっているのがレーシングジイーンの88。

小柄ながら抜群のバネを持つ素質馬であるが・・・
馬房では大人しいものの、人を乗せると打って変わって反抗的でジョンやラルフすら手こずる程だった。
このままでは競走馬になる為のゲート試験すら無理だろうと言う状況だったが、流石に素質馬であるだけにジョンやラルフが毎日格闘していたのだ。

ただ、あれこれしていると彼に言う事を聞かせれる人が1人だけいた。
倉崎百合の長女、麻央だった。

麻央は今年11歳。
一つ下の妹、紗理奈は賢いが、麻央は母親と同じく軽度の知的障害があった。
そして百合も馬と心通わすのが上手いのだが、麻央は更に上手いと言うか色々な動物とほぼ完璧に意思疎通できる程であった。
野鳥すら彼女の肩や頭に止まったりするし、人慣れしていない野良猫すら彼女には擦り寄る。
無論、馬もだ。

そんな麻央はレーシングジイーンの88と『会話』したらしく、彼女が促すと素直にゲートに入ったりしている。
ただ、彼女しか言う事を聞かせられないのは問題だが、これは大きな一歩でもあったのだ。

素直になれば持っている才能と、類まれなるスピードを発揮するのは間違いない。
麻央には従順なレーシングジィーンの88を見て、ラルフやジョンは馬自身のポテンシャルをあらためて評価するとともに

「マオには天性の才能があるね」
「彼女だったらどんなに気性難の馬でも手懐けられるだろうな」

ジョンは麻央の事を百合と同じく『天使』と呼び、兎に角可愛がっているのはラルフも見ている。

「マオはお前が女にするのか?」
「いや、マオは彼女だけを愛する男と添い遂げるべきだ」

乱交当たり前のスノーベリー家で育ちつつも、何でもかんでも手を出す訳ではない。
彼らなりの基準があるようだ。

「じゃあ、スノーベリーから姉貴の息子か誰か迎えるか?・・・インブリードの多重クロスだから、良いアウトブリードになるだろうしな」
「そうだね、マオには一生可愛がられて沢山子供を作れる相手が良いだろうしね」

彼らの感覚は人も馬も同一線上だ。
ラルフとジョンはそんな話をしながら持ち場に戻ったのだ。


同じ頃、エリックとヘンリーが牧場の事務室で話をしていた。

「このぐらいの精子の動きなら受胎可能だと思う」

サクラスターオーの精子を顕微鏡で観察したヘンリーが笑みを浮かべた。

「我らが牧場のママの力だな」
「ああ・・・牧場の・・・俺たちのママは凄いな」

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