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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 349

何時もより昂っている感があったクリーク。
その昂りからか想定より前めに位置してしまった。

一瞬抑えるか迷う悠。
どこかクリークの昂りが勝てぬ故の焦りに感じたからだ。
だが、そんな悠に澪のふとした時に言った言葉が蘇る。
彼女はよく『悠くんはもっと馬達と会話した方がいいよ』なんて言っていた。
悠は馬の気持ちを読み取るのは自他共に上手い。
だが、馬と会話できるのかと言えばそれは無い。
そんな悠とは違い、澪や田沢らは馬と会話して意思疎通してる節がある。
それは天才故と言ってしまえばそれまでだが、その言語化できない何かが大きなポイントである気は悠もしていた。

その言葉を思い出した悠は意識を集中する。
会話とまでは行かないがクリークの意思を読み取ろうと意思を傾けた。

「落ち着こう・・・もっとじっくり・・・君は強いんだから」

クリークから感じる昂りを手綱ではなく言葉で抑えようとする悠。
伝わるかは分からないが意識を集中してそう言い続ける。

それでもまるで「俺に任せてお前は跨ってるだけでいいんだ」というような具合で取り合わないスーパークリーク。
他ではない、自分との戦いのようになってしまう。

それでも最終的には悠の説得に応じたのかエキサイト状態は落ち着き、すんなりと2番手からレースを進める。

そんなスーパークリークを背後からマークするのがオサイチジョージ。
年明けから京都金杯、金鯱賞と連勝している勢いのある馬だ。

本来なら気になる一頭なのだが、今の悠はそれどころじゃない。
クリークとどうレースを組み立てていくかの方が問題なのだ。

昂っていたが落ち着きを取り戻したクリーク。
この昂りはレースに勝ちたいと言う渇望からのものである。
クリークは勝ち負けの概念を理解しており、負けた事で周囲が失望するのを敏感に感じ取っていた。
故に勝たねばと昂った訳だ。
馬と対話まではいかないが、馬の気持ちは察せられる悠・・・
勝ちたいのは悠も一緒、だから腹をくくった。

ペースが遅いと見るや、クリークに指示を出し先頭に躍り出る。
ジャパンカップのあの破天荒なペースに巻き込まれた時とは違い、自分のペースでレースできればそうは負けない。
しかも互いに『先頭に立つ』と言う意思が合致した気がした。
これがもしかすると会話すると言う事かもしれない。

スーパークリークが動いたのを見て背後のオサイチジョージ鞍上の丸川も同じタイミングで仕掛けていく。
丸川としてはこのタイミングを待ってましたという展開だった。

悠には僅かながら焦りが生まれる。
つかず離れずきた相手、追いかける方が立場が楽なのは明らかだ。

それでもスーパークリークは涼しい顔で走っているように見えた。
「俺に任せろ」と言わんばかりに、だ。

クリークの走りに悠は再び気持ちを固める。
悠もクリークも共に負けて悔しい思いをしてきた。
ならば想いは同じ筈だ。

「一緒に勝つぞ、クリーク」

そう語りかけると、クリークの雰囲気が変わった気がした。
今まで自分で走ろうとしていたクリークが『じゃあお前が御してみろよ』とばかりに悠に主導権を渡したのだ。
そして悠の手綱に応えて、ほんの少しペースを落としたのだ。

全身が痺れるようなこの感覚・・・
初めて人馬一体になったような気がした。
これなら絶対に勝てる。
そう確信した悠は絶妙にペースを落としながら先頭を行く。
そしてコーナーを周りながらほんの僅か膨らむ。
それは後ろから見ればペースを上げて遠心力で膨らんだように見えただろう。
そのクリークにオサイチジョージとヤエノムテキがまんまと引っかかりペースを上げたのだ。

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