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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 348

余力を持って、こちらの様子をうかがっている。
その視線が、「俺様に追いついてみろよ」とでも言ってるかのようにクロエには見えたのだ。

そして―

エイミーがステッキを振るうと、サンデーサイレンスは再び加速したのだ。
クロエもそれを見てクリミナルタイプに叱咤の鞭を入れる。
しかしその差は縮まるどころか開いていく一方。
同じように追ったロジータは脚がなくなり失速。

サンデーサイレンスは悠々と先頭でゴール板を駆け抜けていったのだ。

着差以上の強さを感じさせる勝ち方。
ただロジータの野沢の顔は晴れやかだった。

初の海外遠征かつ世界的名馬と戦っての3着。
むしろ勲章と言っていい成績だ。
やり切ったと言う感情が殆どで悔しさは余り感じなかった。

逆にクロエは愕然としていた。
伸び盛りのクリミナルタイプの実力はサンデーサイレンスに近付いてきたと思っていた。
だが、思った以上の差を見せられてショックだった。
まともに走れば超一流と言われてきたサンデーサイレンスだったが、昨年の秋から隙が全く無いぐらいまともに走っている。
それだけに勝ち筋が全く見えなかったのだ。

だが、悲観するクロエと違いクリミナルタイプ陣営は楽観的だった。
負けたとは言え、こちらも成長している。
あともう少しで互角に戦えると見ていたのだ。

そして、カクテルライトに照らされながら黒鹿毛の馬体が勝者だけに認められた凱旋を果たす。
エイミーのみならず、サンデーサイレンスも勝ち誇ったような顔をしていた。

サウジ、そしてドバイと中東のビッグレースを連勝して改めて高い実力を見せつけた。

「最高の気分ね!」
馬上からの勝利インタビューでエイミーはそう叫ぶ。

大喜びのエイミー。
完璧なレース運びで勝てた事に、何か大きな仕事をやり遂げた感があったのだ。



日本に戻って次は、春の中距離王者決定戦である大阪杯が開催される。
オグリキャップが休養、イナリワンが阪神大賞典に回った事で、ここではスーパークリークが大本命。
ヤエノムテキやサクラホクトオー、オサイチジョージが参戦しているものの、人気はスーパークリークが大きく引き離していた。

ここは負けていられない・・・
悠の気持ちは強い。
ジャパンカップ、有馬記念と悔しい負け方をしているだけに、勝ちたいと言う気持ちが強いのだ。

ジャパンカップはあの狂乱のハイペースに行くか抑えるか迷った事が最大の敗因。
有馬記念は上手く乗っていたが故の油断から差し切られた。
どちらも自分の責任だと言う思いが強かった。
自分の妻である澪ならもっと上手く乗っていた気がする。
無論、彼女は『そんな事無いわよ。乗り方が違うだろうけどね』と勝つとまでは言わない。
それは気遣いではあるのだが、澪と悠では乗り方がそもそも違うのだ。

澪は元から馬への当たりが柔らかいという評価。
馬に負担をかけない追い方は新人の頃から絶賛されてきた。
寛子も悠には「澪ちゃんと悠くんでは根本的に騎乗スタイルが違う」と言うが、具体的にそれは明かしてもらえなかった。

「いずれ悠くんも会得できるはずだから」
寛子は悠にそう言った。

少々モヤモヤしながらも迎えた大阪杯。
スーパークリークは好スタートから2番手のポジションを確保する。

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