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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 347

ロジータの鞍上は、全てのレースでコンビを組む野沢である。
オグリキャップやイナリワンに触発されて挑んだ中央挑戦こそ惨敗したものの、暮れの東京大賞典では馬なり圧勝。
更に川崎記念でも8馬身圧勝と、ダートならばオグリやイナリ以上と野沢も確信している程だった。
故にダートならば世界と渡り合えると、海外遠征も考えられたが、牧場からは早期の繁殖入りを望まれた為に、唯一のチャンスがこのドバイワールドカップだったのだ。
それだけに野沢がここに賭ける気持ちは強かった。

野沢にとってホークスターやイブンベイはジャパンカップで知っている故に実力も分かっている。
ただそこまで情報が無い中で、サンデーサイレンスの実力は計りかねていた。
アメリカの大レースを勝ったから凄いのだろうが、オグリやイナリを見た時程の衝撃は感じていなかった。
むしろ怖いのは、丁度ま後ろに控えるホークスターやイブンベイ・・・
故に追走しながら差を詰めるタイミングを見計らっていたのだ。

荒ぶる気性は鳴りを潜め、今日のサンデーサイレンスは淡々とした逃げを打つ。
ロジータ鞍上の野沢はこの漆黒の猛獣にいつ仕掛けようかタイミングを見計らう…

4コーナー。
エイミーは一瞬だけ後方を確認する。
そしてサンデーサイレンスを促し、加速させた。

軽いフットワークでグンと加速していくサンデーサイレンス。
その後ろのロジータ鞍上の野沢は少し迷う。
彼の想定より仕掛けは早い。
それが十分脚が持つからの早仕掛けなのか、単なる焦りかは野沢には判別できなかったが、仮に脚が持つとしてもこの仕掛けは早い気がしていた。
とは言え、脚が持つとするなら単独で行かせる訳にはいかない・・・
故に野沢も追走を選択したのだった。

先頭で加速するサンデーサイレンス、それを追いかけるロジータ。
イブンベイやホークスターはそこから引き離されてしまう。
両方とも本来は芝で良さを発揮するタイプだ。
キングアブドゥルアジーズ競馬場の独特なダートこそ走れたものの、ドバイのダートは全く別物で苦戦していた。
その2頭を尻目に3番手に上がってきたのはクリミナルタイプ。
ダートを得意とする馬にとっては、ここの砂質は実に良いと言えた。

直線半ば。
逃げるサンデーサイレンスはまだまだ余裕。
その脚色は衰える気配がない。
追いかけるロジータも野沢が必死に追うが馬体を併せるところまでは追いつけない。

外から追い上げるクリミナルタイプがじわじわと差を詰めてくる。
レースは三つ巴の争いに持ち込まれる。

3頭並んでの勝負・・・
外からはそう見えただろう。
サンデーが先頭を走り、半馬身差でロジータとクリミナルタイプ。
3頭は後続を置いてデットヒートするが、差は全く縮まらない。
クリミナルタイプもロジータも全力で追っているし、サンデーもエイミーは馬上で追ってはいる。
だが、クロエはサンデーサイレンスの少し気になる視線を感じていた。

馬の視界は広く、顔を正面向けていてもかなり後方まで見渡す事ができる。
故に横に並んでいるクロエとクリミナルタイプが見えているのは当然だが、サンデーから感じるのは明確な意思を持ってこちらを見ていたのだ。
サンデーは普通馬より随分賢いのはクロエも関わって知っているし、明確な意思でレースをしているのも知っている。
だが、今のサンデーの意思のこもった視線は何か異様だった。
まるでクリミナルタイプとロジータの走りを観察しているようだったのだ。

クロエの背中が冷たくなる。
サンデーは意思を持って、2頭の走りに合わせて少しだけ前を走っているようなのだ。

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