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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 345

この時、エイミーとクロエの姉妹は同じ事を考えていた。
インディアンリッジはそう簡単に止まらないと・・・

そのインディアンリッジは先頭を爆走中であった。
初のダートだが、感触はいい。
鞍上のコーエンもダート経験は薄いが、相棒が気持ち良く走っているのは理解していた。

インディアンリッジは彼からしても難しい馬だった。
兎に角ムラがあり過ぎる。
ただ気分の乗った時の爆発力は誰もが認める所で、G 1すら勝っていないこの馬に期待する関係者はかなり多い。
G 1を買っていない馬が種牡馬になる事は、血統的な意味でも珍しくない。
特にマルセル・ブサックの傑作、トウルビヨンの血を引くこの馬の希少価値は大きいが、それが即種牡馬入りする理由かと言われればそうは言えない。
たとえ良血だろうが希少な血だろうが、活躍せねば淘汰されるのが競馬の世界だ。
故にインディアンリッジがここまで評価されるのは、時折見せる爆発的な能力所以であった。

直線に差し掛かってもそのインディアンリッジの脚は衰え無かった。
ここぞとばかりにコーエンは全力で追った。

ハイペースで飛ばした馬とは思えない再加速力。
2番手以降の先行勢を再び引き離していく。
逆に追っていたダンシングスプリーやセイフリーケプトらのほうが苦しい立場となり、直線入り口から半ばにかけては2,3馬身かそれ以上のリードとなる。

追いかけて行った組が失速していく中でブラックタイアフェアーが外から2番手に上がる。

ノースウインドの瞬発力を知るエイミーからすれば、早仕掛けは差されるリスクもある。
だが、インディアンリッジが止まらないだろうと見て、後ろへの警戒を捨てた。
まず前を捉えないと意味は無い・・・
エイミーの長所とも言える思い切りの良さだった。

それに対して、クロエは時を待った。
クロエの性格からして、慎重さ故の選択と言う部分も少なからずはある。
だが何より、ノースウインドに対しての信頼が大きい。
故にブラックタイアフェアより更に遅らせる形でゴーサインを出したのだった。

その同じ頃にエイミーとブラックタイアフェアはインディアンリッジに追いついた。
だが、並んでからインディアンリッジが更にスピードを上げ、最後の抵抗を試みたのだ。
インディアンリッジ、ブラックタイアフェア、どちらも譲らず並んで叩き合う。
ゴールまではあと100m・・・
2頭は熾烈に叩き合ったのだ。

だか、猛烈な脚でその2頭に差を詰める馬・・・
ノースウインドが猛然と追い込んでくる。

最後の力を振り絞って粘り込みを図るインディアンリッジ。
ブラックタイアフェアーがそれに馬体を併せる。
大外から真っ白な馬体がデッドヒートを繰り広げる2頭に迫る。
クロエも目一杯追ってノースウィンドを叱咤激励した。

その甲斐あって前の争いに追いついた。
そこがゴールだった。

ゴールを駆け抜けたクロエが拳を突き上げる。
これまで中々大レースに勝てずにいた鬱憤を晴らすような見事な差し切り勝ちだった。
それが異国であっても嬉しさは何も変わらない。

隣に追いついてきたエイミーがクロエに向かって手を伸ばす。
その顔は満面の笑み。
何時もクロエが勝つと喜んでくれる姉だったが、それはどこか下に見られているようで好きになれなかった。
だが今日は素直に手を伸ばせた。

姉妹でハイタッチしてのウイニングラン。
最後はブラックタイアフェアに競り負けたインディアンリッジだったがコーエンも納得の内容だった。
それだけに前を行くウィッチ姉妹のウイニングランを祝福しながら見る事ができたのだった。


ドバイワールドカップを前に、招待されたサンデーサイレンスの生産者ハンロックは感慨深げであった。
アメリカでは全く見向きされないサンデーサイレンスだったが、日本のホースマンの熱意に彼の持っている残りの権利を売る決断をしたのは数時間前であった。
吉野の熱意もそうだが、彼を仲介する祐志の熱意に負けた形だ。

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