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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 343

そして悠は初めての子供と対面。
その腕に抱き生命の重さを感じたのだった。



そして三月の末にはドバイミーティングが開催される。
日本からはオグリキャップが参加を検討されていたものの、体調の回復が思わしくなく断念。
地方の女傑ロジータがドバイワールドカップに登録されたが、まだ日本の目は中東にはさほど向かっていない現状だった。
当然、本場ヨーロッパに殆ど遠征させずサウジやドバイ、香港に所有馬を出す樹里の評判もさほど上がらず、一部の馬主や関係者だけが評価する流れになっている。

それはアメリカでも同じ。
サウジカップを圧勝したサンデーサイレンスの評価はさして上がらず、その前に行われたペガサスワールドカップに勝ったイージーゴアの評価は更に上がる結果であった。
そのイージーゴアは今年一杯国内レースを使い引退する予定であった。

勝っても評価に繋がり難いと言われてはいるものの、吉野に言わせれば『評価がさして上がらずG  1勝利数が増える方が日本に導入しやすい』らしく、そう言う意味で歓迎してる節はあった。

世界最高賞金のレースを勝っても競馬新興国でのレースは評価は高くなく、アメリカ国内に受け入れ牧場がなかなか見つからず、そこに手を上げたのが吉野だった。

サンデーサイレンスの共同馬主たちにはクリスからその話が行き渡っており、満場一致で引退後の日本行きが内定した。
クリスと樹里の間では現役のラストランはチャンピオンズカップに出したい、と言う話もなされていた。

樹里も日本でサンデーサイレンスが種牡馬となると、種付け権と言う意味で還元されるので得な話でしかない。
吉野が評価する前から樹里もこの馬は特別に感じていたし、エリックやヘンリーからも牧場のレベルアップには欠かせない血との評価を得ていた。
そして生産者側もサンデーサイレンスの稼ぎで苦しい経営状況が一息つけた所もあって、日本導入に関して前向きになったのも大きい話だった。


そのサンデーサイレンスの前にノースウインドがドバイゴールデンシャヒーンに出走する。
リアドのキングアブドゥルアジーズ競馬場もそうだが、ここドバイも直線が長い事もあってノースウィンドにとってはアメリカより走りやすい環境かもしれない。
メンバーは前走とほぼ変わらない。
アメリカからダンシングスプリーやセイフリーケプト、ブラックタイアフェアーなど前回のレースをステップにしてきているメンバー。
ヨーロッパからは若干減っているが、インディアンリッジの参戦が周囲を驚かしていた。

アイルランド生まれで芝の5〜6ハロンで重賞を3勝しているスピード馬で、先のサウジ開催では1351ターフスプリントに出走して完勝している。
ドバイミーティングではアルクオズスプリントに出走するものだと各国の競馬メディアは思い込んでいた。

「あの馬はダート走れるの?」
「やってみないとわからないな」

亜紀は競馬学校へ入学とあって、今回は祐志と共に観戦に来ている。
その祐志ですら不可解と言えるインディアンリッジの参戦だった。

インディアンリッジはG 1こそ制していないが、ガトゥージェネルーやソヴィエトスター、ウォーニングとしのぎを削ってきた強豪馬である。
今回、この後引退の決まったインディアンリッジ陣営が悲願のG 1制覇を目論んでドバイに来た訳だが、何故かダートを選んだ事で物議を醸していた。
マスコミの一部報道によればライバルが集まって熾烈な争いとなるアルクオズスプリントを避けたと言う観測もなされたが、陣営からはダート戦でも自信があるコメントも出ていた。

そのインディアンリッジの最大の武器が爆発力である。
スタートから爆発的な加速で先手を取り、そのまま押し切る。
反面、スムーズに加速できなければ惨敗。
距離の融通は全く利かないが、得意距離なら最大限力を発揮できる。
そんな個性の強いスプリンターがインディアンリッジだった。

「無冠の帝王同士の対戦だな」

そう言う祐志に樹里も頷く。

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