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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 35

スターライトブルーではなく、シロノライデンでこの感覚に襲われるとは予想外だった。
少し焦りの出る澪だが、シロノライデンのほうはいたって涼しい顔で走っている。

(どうする…?)

周りは動く気配はない。
目に見えてスパートをかけるのは流石に不味い。
ならば、気にされない程度にゆっくりと上昇していくか。
そう考えている間に2度目の衝撃。

(腹をくくるしかないのか)

一瞬菊花賞のレースが頭に浮かぶ澪だが、躊躇いもある。

ただ有力馬に動きは無い。
最後方だからよく見える事は経験の少ない澪にとってありがたい話だ。
それぞれの騎手の駆け引きが見える。
それの全てを活かせる訳では無いが澪にとって余り多くない長距離戦での学びの機会だった。

2週目のバックストレート。
人気のカネクロシオとホッカイペガサスが不気味なぐらい落ち着いている。
差し馬が先行馬を牽制するようにつつき始めているが、この2頭は我関せず的に内ラチ沿いを走っていた。
どちらもベテランと名手だけに隙が無いレース運びだった。

それだけに澪は迷う。
一体どこでシロノライデンを動かすか・・・
シロノライデンは既に菊花賞に迫る距離を走っているが、全くバテてる感は無い。
そして3コーナーに差し掛かってもペースは全く上がらないでいた。

ズゥンと感じる子宮への衝撃。
中央最長距離のレースは澪にとっても過酷だった。
疼きが酷くなっていき、3コーナーで少しバランスを崩す。
そのせいでシロノライデンが手前を変えてしまったのも想定外だった。
それが澪を焦らせていく。

エンジンがかかりだす。
ジワリ、とシロノライデンが外側から進出する。
澪は脂汗を掻きながら手綱を扱いた。

ウチのカネクロシオとホッカイペガサスはまだ動かないか。
一瞬名手の手綱がスッと動いた。
カネクロシオが内から先頭に並ぶ。
追随するホッカイペガサス。
シロノライデンは外、外。
追い出しを始めようとする澪にズシリと重たい衝撃が走る。

その衝撃が結構大きく、澪の動きが一瞬止まる。
その一瞬は運悪く先行馬の仕掛けのタイミングだった。

しまったとばかりに4コーナー半ばで鞭を入れる澪。
坂はあれど中山の直線は短い上に、先行馬に止まる気配は無い。
そしてシロノライデンの反応も悪く、直線入った時には7番手であった。

後は直線勝負。
初めての最長距離レースに疲弊しきった澪だが、最後の力を振り絞って鞭を振るい必死に追う。
追うと下腹部の疼きもそれに合わせて澪に重くのしかかって、肉体的にも精神的にも追い込んでいく。

だが、エンジンのかかったシロノライデンはぐんぐんと加速していく。
中山の坂などものとせず、残り200mで2頭交わし、先頭集団に取り付く。
更に残り100mで2頭交わすが、先頭カネクロシオは更に5馬身先にいた。

届かない・・・
誰もがそう思う差だったが、猛然と追い込んだシロノライデンはゴール直前でカネクロシオ、ホッカイペガサスともつれるようにゴール板を駆け抜ける。
カネクロシオどころか、ホッカイペガサスに半馬身届かない3着。
だが、菊花賞3着馬の実力は示せたのだ。

3勝クラスから格上挑戦だったホッカイペガサスとは2キロの斤量差があった。
それを考えたらよくやっている。
同じ斤量で菊花賞でも先着したフォスターソロンはそこから離されている。

いい勝負はした。
それでも、納得は行っていない。
澪はシロノライデンに跨りながらぐったり肩を落としながら引き上げていく。

「いい馬だから、もっとうまく乗らないとね」

澪に声をかけたのはホッカイペガサスの鞍上・岡江だった。

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