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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 34

そんな奥原の熱い言葉に樹里の胸まで熱くなる。
今日は挨拶だけと帰った奥原。
その数時間後に三冠馬の対戦・・・
ジャパンカップが始まったのだ。


それは意外な結末だった。
優勝騎手が語る。

「カツラギエースは一介の逃げ馬ではない!」

野武士のような優馬騎手が胸を張る。
先行馬のカツラギエースをこの大舞台で逃げを打ち、見事に2頭の三冠馬と外国馬を抑えて勝利した。
ジャパンカップにおける日本馬初制覇がこの馬である事に場内はどよめくが、騎手は堂々と言ってのける。

これはフロックではない・・・

宝塚記念を勝ち、毎日王冠ではミスターシービーを打ち破った日本を代表する馬なのだ、カツラギエースは。
それを戦前から穴馬扱いされて憤慨していた彼にしてみれば、してやったりなのだろう。
いや、彼だけでなく競馬関係者全てがそんな気分だったのかもしれない。
シンボリルドルフ陣営を除いては・・・

だが、そのシンボリルドルフ陣営には動揺は無い。
無敗の王者に初黒星がついてもだ。

「ルドルフだって負けるときはある」
「連勝はいずれ止まるもの」

騎手も、調教師も周りが思っているよりもサバサバしていた。
そして、結果よりも次を見据える。

一方でミスターシービーは10着に大敗した。
激走の反動か、展開が向かなかったか。

カツラギエースと「三強」となった古馬戦線。
三頭は年末の有馬記念で再び相まみえる。

そして、シロノライデンだ。
中央競馬随一のマラソンレース、ステイヤーズステークスに出走。
馬体重は菊花賞よりやや戻して、激走の疲れは癒やされた感がある。
調教の動きは良く無いが、調教で走らないタイプの馬なので仁藤も心配はしていなかった。

澪の方の調子はさほど良く無い。
ここまで34勝と新人賞は確実ながら勢いには陰りがあった。

元々綺麗な騎乗フォームに定評があったが、最近そのフォームに乱れがあるのが原因だと関係者からも指摘されていたが、それを中々直せずに苦戦していた。
と言うのも、フォームの乱れは馬上で変に子宮を刺激されて崩れているからで、それを口に出せないだけに本人としても解決の糸口が中々見出せずにいた。
ただ、マジイキしてしまう程のスターライトブルーの時はむしろ綺麗に乗れていたりするので、その辺りに何かヒントがあるのかもしれないと、事情を知る寛子から指摘されたりはしていた。

そして久々のシロノライデン。
相変わらずもっさりしていて、走りもゴツゴツしている。
乗り心地はスターライトブルーとは雲泥の差だ。

決していい乗り心地ではないが、レース中に絶頂させられるのに比べたらまだマシなのでは、と澪が感じてしまうほど。
どっちにしても勝てればいいのだが。

レースは9頭立てと少頭数。
直前に同期のダービー3着馬フジノフウウンが出走を取り消した。
菊花賞でともに走ったフォスターソロンとその菊花賞に出られなかったホッカイペガサス、そしてシロノライデンの実力ある3歳牡馬が先輩ステイヤー・カネクロシオに挑むという構図だ。

レースは長距離戦らしい淡々としたペース。
シロノライデンはいつも通りの後方待機。
序盤は落ち着いた感じで走れてはいた。
しかし明確な逃げ馬のいないレースは徐々にペースが落ちていく。

マズイな・・・澪が呟く。
このペースはいくら長距離戦でも遅すぎる。
だからと言って早々に動けないのがこの中央競馬最長レース。
経験のある騎手が圧倒的有利と言われる長距離戦で、新人でしかない澪はやはり苦戦していた。
ひたすらシロノライデンとの折り合いを付ける事に終始していたのだ。

シロノライデンは遅いペースに焦れるタイプではない。
だが、ペースが遅いとロングスパートしても先行馬が体力を残していて追いつかない事態も考えられるし、実際シロノライデンの負けパターンの中にはそれも多い。
なら、どうする・・・
その答えが見つからない。

そんな事を考えているうちに2週目に入る。
その辺りから澪の下腹部がズンと重くなってきた。
とうとう疼いてきたのだ。
澪が歯を食いしばる。
これで騎乗バランスを崩せば大きなロスになりかねない。

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