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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 337

クレアがイブンベイとホークスターに距離を詰めながら、クリミナルタイプを外に持ち出す。
前のレースで外の方が伸びる感覚があるからなのか、アメリカ遠征馬達も外に持ち出す馬がそれなりにいた。
これこそがエイミーとサンデーサイレンスの待っていたものだ。

直線に入り、程良く開いた内側にサンデーを導く。
やる事が分かっているだけに、エイミーが鞭を持ち替えただけで前にと進出を始める。
まだイブンベイもホークスターも前で粘っている。
追いかける馬も中々捉えられない。
サンデーサイレンスも前へと詰めて行き、先頭まで3馬身程。
直線半ばでエイミーは鞭を振るう。

待ってましたとばかりにサンデーサイレンスが荒々しく加速する。
胃までズシンと来るような跳ねる加速で少し前のバヤコアとクリエイターを瞬時に交わしてのけた。

先頭では粘るイブンベイを振り切ったホークスターが先頭。
そこに外からクリミナルタイプが半馬身まで迫る。
だが、その後ろ・・・
一気にサンデーサイレンスが差無く詰めてきていた。

残り200m。
ホークスターはよく頑張ったがさすがに苦しくなる。
それを捉えていくクリミナルタイプ。
交わして先頭に立つ、それに抜け出す間もなくサンデーサイレンスが馬体を併せた。

クロエは一瞬外を見た。
姉とレースで競い合う、初めての経験だった。

勿論今まで何度も同じレースに乗っているし、ノースウインドでサンデーサイレンスとクラシックで争いもした。
だが、今回はもしかすれば姉とサンデーサイレンスを実力でねじ伏せられる馬と出会い勝負出来ていると言う初めてのシチュエーションだった。

アメリカ西地区でのクロエとエイミーの勝利数はそこまで差が無く、世間の評判も殆ど同じだ。
ただ堅実に勝つクロエと大穴空けるエイミーで人気はややエイミーが上と言う評価だ。
そんな2人がサンデーサイレンスに初めて出会い調教に乗った時・・・
クロエにとって震えがくるぐらい素晴らしい乗り味だった。

だが、調教が終わるとサンデーはまさに『終わったからお前に用無し』と言わんばかりにクロエを振り落とし、サッサと厩舎に1人で帰ってしまったのだ。
その次の日にエイミーが乗ると、振り落とす事無く走ったから、要はクロエがサンデーはお気に召さなかったのだろう。

姉が選ばれて自分が選ばれなかった事にショックを受けたクロエだが、よくサンデーを観察しているとある事に気付いた。

サンデーは相当警戒心が強く、人を信用していない。
ただ普通の馬より遥かに賢く、自分が人を乗せ走る事が存在意義である事も理解している。
だがそれは人を信じぬサンデーにとって苦痛であり、故に常に怒っているようなのだ。

己にそんな宿命を背負わせた人間・・・
いや、この世の中全てに対して怒っていた。
それはクロエにとっても身震いする程怖く感じたのだが、エイミーは平気らしい。
姉妹の中で最も物怖じしないエイミーは、馬に蹴られようが怯んだ事が無い。
そんな性格だからサンデーはエイミーを選んだのかもしれない。
ただ選ばれなかったクロエにとっては苦い記憶だった。

あれから少しはクロエに心を開いてくれるようになったサンデーだが、結局エイミーと共に栄光を築いている。
そんな姉とサンデーを倒したいと思うのは嫉妬心であるのは自分でもよく分かっている。
ノースウインドとクラシックで戦った時も、負けた悔しさは嫉妬心で倍増されていた気がしていた。

それだけに負けたく無い・・・
普段から冷静なクロエが表情を歪ませて必死にクリミナルタイプを追う。
今回任されて初めて乗って、これはサンデーと勝負できると自信を持った馬だ。
兎に角勝たねば、この心に積もったものが消え去らない気がしていたのだ。

だが・・・
先頭に立ったクリミナルタイプをサンデーサイレンスが残り100mで捉える。
グイグイと差を詰め半馬身、そしてクビ・・・
そして追い越すと、差を広げていく。
エイミーもサンデーもこちらを見ない。
前しか見ないでドンドン差を広げていく。
クロエも理解していた。
エイミーが乗っている時でも本気にならない事もあるサンデーサイレンスが、今回は本気なのだと・・・
本気のサンデーサイレンスの走りを見せているのだ。

そのまま1馬身開いてゴール。
サンデーサイレンスの圧倒的なパフォーマンスを見せたレースになったのだ。

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