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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 334

トニービンはジャパンカップを走った後に引退して、それからは社来ファームで種牡馬入りした。
吉野も非常に高評価で、産駒が走るのを楽しみにしていると真奈に何度も話していた。

その吉野がトニービン同様に期待しているのが樹里が半持ち所有しているサンデーサイレンス。
現地での評判がイマイチと聞いた吉野は高齢の自身の代わりに息子をアメリカに渡らせレースを視察させていた。

気分屋だが、ハマった時のレースぶりは圧巻。
クラシック2冠だけでも優秀だが、アメリカ最高峰のブリーダーズカップクラシックまで制している。
だが、驚くべきは・・・
これだけの実績にも関わらず、種牡馬としての将来が全く見えないでいるのだ。

ライバルであるイージーゴアは既に高額のシンジケートが組まれるのが確定・・・
期待の良血実績馬だからこそ、その血は宝石でもあった。
逆にマイナー血統の突然変異扱いのサンデーサイレンスは、全くと良い程生産者から見向きもされていなかった。

故に中東遠征はヨーロッパやアラブのオーナー達への売り込みをサンデーサイレンスの生産者が願ったからのローテーションであり、この時点では生産者はアメリカでの種牡馬入りに望みを持っていた。
樹里と吉野が権利を持つものの、種牡馬入りの決定権は牧場が有する契約の為、日本導入は後回しにされていた。
とは言え、社来としてはサンデーサイレンス導入の為に少なくない金を用意したとも言われていた。

これまでにも海外の名馬を日本の生産者が購入して日本で種牡馬入りさせることは何度もあった。
成功した種牡馬もいたが実績としては失敗した方がはるかに多くて、「日本は種牡馬の墓場だ」と揶揄されてきた。

吉野善太は息子の照樹や勝生に対してこれからの競馬は内国産だけでは通用しない、と常に話していた。

その手始めが凱旋門賞馬トニービンであった。

サンデーサイレンスはそのトニービン以上と期待する馬であったが、牧場側がまだアメリカでの種牡馬入りに希望を持っている以上、社来にとって難しい交渉となっている。
金をいくら積んでも、競馬未開の地に生産馬を送ると言うのが心情的に難しいだろうと言うのは吉野も理解はできる。
ただ、牧場主も樹里の事は気に入っているようで、最近は絶対に駄目とまでは言わなくなっていた。
今年一杯走らせて、それでも評価が上がらなければ諦める・・・
今の時点でそこまでの話はついていた。


そんなサンデーサイレンスは年明け初戦をサウジアラビアで迎える。
黒い暴君も帯同にノースウインドが居るからご機嫌。
そのノースウインドはリアドダートスプリントに出走する。

メインのサウジカップ以外はG 3と言うサウジカップデー。
とは言え通常のG 3よりはメンバーは強いものの、アメリカ遠征馬よりヨーロッパ遠征馬の方が多い。
またキングアブドゥルアジーズ競馬場のダートの質は独特で、芝の馬も好走する傾向にある。

樹里の積極的な海外遠征を見て、自分たちも追随したいと考える馬主が日本にも増えてきたが、彼らには金銭面での問題があったり、海外遠征に関するノウハウが不足していたりで、今回も実現することはなかった。
吉野もそういう部分が整ってきたらいずれ積極的に挑戦していきたい、とは樹里に語っている。


まずはノースウィンドが参戦するリアドダートスプリント。
1200mのレースは混戦ムード。
アメリカからの遠征馬はノースウィンドのほかにはダンシングスプリー、セイフリーケプト、ブラックタイアフェアーといったところ。

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