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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 326

スーパークリークの次走はもちろん有馬記念。
この秋明らかに過密とも言えるローテで来たオグリキャップも当然出走を視野に入れてくるだろう。
今回は見せ場のなかったイナリワンも巻き返しを誓ってくるはずだ。

次は負けない。
引き上げてくる芦毛の馬体を眺めながら、悠は心の中で闘志を燃やすのだった。

そんな衝撃のジャパンカップが終わり、季節は冬へと移り変わっていく。
そんな冬に毎年恒例の2歳牝馬チャンピオンのレースが行われる。

今年の阪神ジュベナイルフィリーズ、世間では2強対決と言われている。
濱松厩舎期待のディザイアとアクアパッツァ。
走りの次元が同世代から頭一つ抜けているのを、ここまで3レースで見せつけてきた。

無論、それ以外にも将来のクラシック候補と目される馬は多い。
イクノディクタス、エイシンサニー、ツルマルベッピンの関西有望株。
関東ではヤマタケサリー、スイートミトゥーナ。
それらは例年と比べても中々のハイレベルと言っていいぐらいではあった。

そして有力2頭はパドックからして対照的だった。
牝馬らしい小ぶりな体格ながら軽快に歩く明るい栗毛のアクアパッツァ。
牝馬としては大柄で重厚感のありながらも艶やかな鹿毛のディザイア。
気性も穏やかな方のアクアパッツァと激しいディザイアと真反対だ。

そして人に対しての対応も2頭は違う。
人懐っこくてデレデレになるアクアパッツァ。
周回中も厩務員に甘えて歩いている。

悠が騎乗に近づくと、早く乗ってとばかりに自ら寄っていくぐらい人好きなのだ。

逆にディザイアはプライドが高く、人に懐いた様子は見せない。
ただ担当厩務員や主戦の松中が言うには、ちゃんと理解して相対する人間に対しては心を開くようだ。
松中が乗ろうとする時も興味無さそうに明後日の方を向いているが、乗り易いようにじっとしていたりする。
そして上に乗った松中が鬣を撫でると、そんな事しても靡かないわよと言う顔をしながらも、耳だけはピクピク動いていたりする。
言うなればツンデレなのだ。

そして体格や性格が真反対の2頭だが、戦術も真反対・・・
類稀なる先行力を持つアクアパッツァと、比類なき瞬発力を持つディザイア。
逆に言えばアクアパッツァは瞬発力に欠け、ディザイアは不器用で後方待機以外の戦術が取りにくい。
そんな特性も双方の主戦が理解していた。

パドックではツンケンしているディザイアも、松中がまたがれば途端に大人しくなる。
アクアパッツァ共々、返し馬でコースに駆け出していく。
同じ勝負服が仲良くターフを駆けるさまは記念にどこかに取っておきたいと思った樹里だった。

レースは少々ばらつき気味のスタートとなる。
ディザイアは後手を踏む形になったがいつものことなので松中に焦りはない。
アクアパッツァは好スタートで先行集団に取り付いていこうとする。

そして先行集団が遅いと見るや、先頭に立ってレースを引っ張った。

(相変わらず上手いと言うか、抜け目無いなぁ・・・)

ディザイア鞍上の松中が前方を見ながら心の内で呟く。
若手有望株と言われてきた松中だが、既に年下の悠に戦歴は追い越されてしまっている。
とは言え、悠や澪と言う圧倒的な逸材を除けば、彼の実力も若手の範疇から飛び出している。
比べる相手が悪いと言えばそれまでだが、彼は比べられても追い越してやると思えるぐらいの気概はある。

悠や澪の活躍で、騎乗機会が増えた関西の若手達は勢いがある。
だが、一方で悠や澪には敵わないと最初から諦めてる者も結構居る。
甘いマスクと柔和な性格と言われる松中であるが、そんな若手の風潮が心底嫌なのだ。
悠や澪の実力を認めながらも、大舞台で彼らを破りたい・・・
普段顔には出さないタイプだが、顔に似合わず負けず嫌いであるのだ。

そんな松中は悠が作るペースの中でディザイアを後方待機させながら脚を貯める。

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