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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 325

そのオグリキャップはこのハイペースに巻き込まれながら、グイグイと伸びていく。
本格派のステイヤーであるスーパークリークが一杯になっている横で、南の鞭連打と気合いの追い出しに応え、信じられない脚を使っていた。

元の主戦、澪と悠でオグリキャップ攻略をレース前に語っていた。
2人の共通認識として、オグリキャップは本来はマイラーである。
とは言えクラシックディスタンスぐらいなら十分走れるスタミナも備えているし、距離に合わせた走り方が出来るぐらい賢い馬でもある。
とは言え、春の天皇賞を走れるスタミナがあるかと言えば疑問である故に、スタミナ勝負に持ち込めばスーパークリークに分があると言うのが2人の共通認識だった。

故に秋の天皇賞はスタミナ勝負で勝った。
今回の狂乱のハイペースは究極のスタミナ勝負である筈で、スーパークリークですら脚が一杯になっているのに・・・
オグリキャップはまだ余力があるのだ。

その事に悠は驚愕する。
自分の常識と、クリークの能力が全く通用していない。
これは何なのだと・・・

ふとその時、最後に澪の言った言葉が甦ってくる。
オグリキャップに常識は当てはまらないと・・・

中央移籍直後から主戦を勤めた澪。
その中で感じたオグリキャップと言う馬が怪物たる由縁・・・
オグリキャップは人の強い想いを走る力に変えると。
確かに馬と人は心を通わせる事も稀にできるし、馬も人の為に頑張る事もある。
だが、オグリキャップはそう言うものではない。
明確に人の願いや想いを力に変えて走る感覚が乗っていた澪にあった。

タマモクロスに負けた2戦は澪に迷いがあった。
その迷いを吹っ切って乗れた有馬記念では、オグリキャップは澪の想像以上の走りをした。
その走りで澪の中でオグリキャップの怪物性の一つの答えが出た気がしていた。
それこそが、オグリキャップは人の強い想いを力に変えると言うものだった。
多分、他人に言えば笑われるような話だから心に秘めていたが、悠だからこそ打ち明けた話であった。

その澪の言葉が甦って、悠の中でパズルのピースがハマった感覚となった。

年間勝利数で言えば、もうベテランの南を超えている。
正直騎乗技術もお手本とする河井や天才田沢、そして澪ぐらいしか関西では並ぶ相手ではないと思っている。
なので南がオグリキャップの主戦に決まった時、澪の時程の脅威は感じていなかった。
ただ、南がオグリキャップの主戦に決まった経緯が澪の推薦もあった事に驚いたぐらいだ。

だが、クリークが一杯になっている所で、なおも前へと進んでいくオグリキャップを見ていると、ようやく澪が南を推薦した理由が分かってきた。
澪は自分ができなかった部分を南ならできると思って指名したのだろう。
天皇賞で勝って今度は更にクリークの方が得意な距離で意気込んでいたが、南はオグリキャップを更なる怪物の域まで押し上げてきていたのだ。

「クリーク!まだ!まだ!やれるだろっ!」

それでも、それでも食らいつこうと悠は叫んでクリークを追う。
それに応えようとクリークも最後の力を振り絞るが、オグリキャップとの差は開いていく。

抜け出したホーリックスめがけて猛然と伸び脚を見せるオグリキャップ。
スーパークリークとの差は無情にも2馬身、3馬身と広がっていく。
3番手のスーパークリークには後方で脚を溜めていたペイザバトラーの姿がじわじわと迫っていた。

オグリキャップは驚異的な伸びでホーリックスに追いついていた。
しかしホーリックスも、ディ・サリバンも、負けてはいない。
直線後半は2頭の芦毛のマッチレースが繰り広げられた。

その熾烈なマッチレースの明暗を分けたのはスタミナだった。
気力のみで走っていたオグリキャップ・・・
最後の最後までスタミナを使い切ったホーリックス。
たったクビの差。
クビの差でホーリックスが凌ぎ切ったのだ。

勝ちタイムは2.22.2・・・
圧倒的なまでの世界レコード。
道中のペースが速すぎて追走で脚を使い潰した後方の馬が全く勝負に絡めなかったと言う異常事態。
勝ったホーリックス以上に、連闘で挑み負けたオグリキャップの強さが際立った戦いとなった。

そんな中でスーパークリークはホークスターを交わせず4着。
ステイヤーのクリークが脚を使い潰したのは、狂乱のハイペースに戦術対応できなかった悠の責任だろう。
本人もその自覚があった。
更に言えば、オグリキャップにねじ伏せられた感があり、それが澪に負けたような感覚にさせられてしまっていた。

家に帰ったら自分の男根で徹底的に分からせてやると、八つ当たり気味に思う悠にとって今回は本当に苦い敗戦となったのだった。

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