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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 322

そんな中、澪も馴染みの記者に声をかけられていた。

「いやいや、すっかり奥さんらしくなって・・・所でオグリの元主戦として今回のローテはどう?」

元主戦と言う言い方は何か辛いですねと冗談めかして笑いながら澪は話を続ける。

「オグリキャップにセオリーや常識はありませんよ」

その澪の言葉に記者が頭を掻く。
それはある種関係者に配慮した上での優等生的な答えにも見える。
だが、短くない付き合いで、彼女がオグリキャップをどう感じたかが詰まった答えだ。

「とは言え去年の激闘から半年休みもした・・・怪物とてサラブレッドである事に変わりないのじゃ?」
「そうですね・・・でも何かをもって生まれた馬だから怪物なのだと思います」

記者から見ても澪が自分が乗れたらと言う気持ちが全く無いとは言えない。
だが、オグリキャップに対する信頼が揺るぎないからの言葉なのだろう。
澪の話を聞きながら、記者はこれは面白い記事が書けそうだと心躍る気持ちになったのだった。


マイルCSの激戦から数時間経った夜。
澪は帰宅した悠を出迎えた。

「やっぱりあの馬は怪物だね…タダものじゃない」
「バンブーも素晴らしい競馬をしたけどね」
「道中いくら良くても結果、鼻差でも負けは負けさ。勝たなきゃ意味がない」
「悠くんらしいね」

そして話は――

「オグリが連闘?」
「みたいだよ。ジャパンカップに出るって」
「…………面白いじゃないか」

その悠の言葉で澪は理解する。
これはいつも以上に激らせたなと。
澪を抱きしめてきた掌の温度の高さ・・・
表情には殆ど出ないが、澪を見る瞳の奥はオスの獣性が宿っていた。

「澪の時より隙だらけなんだけど・・・展開にハメるのだけはウマいからなぁ・・・」

出産に向けて大きく張り、巨乳と呼ばれる範疇となった澪の胸を弄りながら悠はボヤくように言う。
馬の良さを引き出す澪と自分の得意展開にハマったら凄まじい結果を出す南では、同じ馬でも戦術は全く変わってしまう。

「んぁ・・・これだけ連戦で尚且つ距離延長だから」
「先行策・・・ね」

オグリキャップは連戦すればする程、レースに向かって気合いが乗っていくタイプだ。
そして想像を絶する驚異的な粘りを見せる。
一方、連戦をすれば確実に切れ味が鈍るタイプである。
よく大レースでも見せてきた豪脚で語られる事の多いオグリキャップだが、澪は逆に追い込まれた時に見せる驚異的な粘りこそ、オグリキャップ最大の武器だと思っていた。

悠ももちろんジャパンカップに騎乗馬がいる。
秋の天皇賞でオグリキャップを破ったスーパークリーク。
オグリ陣営は当然そのときの雪辱を果たすべく挑んでくるだろう。
今日のような決め打ちに出た時の南と、驚異的な伸び脚と底力を持っているオグリキャップの怖さは悠も十分わかっている。
だが今日とは舞台も距離も変わる。

「まあ、こっちも負けないからね」
「ふあっ……」

まだ何か言おうとしていた澪の口を、悠はキスで塞いだ。

キスしながら澪の膨らんだ腹に手を当てる。
不思議な感覚だが、ここに自分の子供がいるらしい。

昔から悠は子供が欲しいと思った事は無かった。
父は騎手として家庭を殆ど顧なかったし、子供達との関わりも薄かった。
2人の兄は歳が離れていてそこまで構ってくれないし、母は歳の離れた弟にかかりきりだった為に、心理的に孤独な少年時代を過ごした。
それがあって寛子に母性を求めたのだろうし、厩舎のお姉さん達に手を出したのもそれも要因だろう。
勿論、人一倍強い性欲と言うのもあるが。

故に年上の女に甘えたいが基本である悠は、甘える対象を自分から奪っていく子供は好きでは無い。
そんな中で唯一孕ませたいと思ったのが澪なのであった。

それがどう言う心境の変化かは自分でも分からない。
一応澪は子供を産んで、その後に騎手復帰も考えているようだし、騎手澪と勝負したいと言う欲も悠にはある。
だが今の悠に澪を騎手復帰させる気は無い。
それは危険だからとか言うのではなかった。
単純にまだまだ澪を孕ませたい欲求がどんどん強くなっているからだ。

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