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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 317

そして、スーパークリークを交わしスッと上がっていくメジロアルダン。

「同じ事考えてるんだ」

メジロアルダン鞍上の岡江を見て呟く悠。
この早い仕掛けは悠も理解はできた。
それは岡江も悠も『オグリキャップが前過ぎる』と感じていて、故にどちらも早仕掛けからの抜き出し押し切りを想定していたからだ。

岡江も悠もオグリキャップは自在性があって何処からでも仕掛けられると思っている。
だが、距離が長くなるとスタミナ面で問題を抱えるのも相手してきて理解している。
去年のタマモクロスとの対戦がまさにそれで、スタミナ勝負に持ち込まれると弱みを見せてしまうのだ。

それは南も理解しているだろうが、やや前目の位置なのは毎日王冠のレース内容が頭にあってなのだろう。
あのデットヒート故にイナリワンを意識し過ぎているように感じた。
だからこそ先行抜け出し戦術に意味が出て来る。
岡江はメジロアルダンのスタミナに自信を持っているし、悠も同じだ。
いや、このメンバーで唯一・・・
スーパークリークだけ本格的なステイヤーなのだ。

無尽蔵のスタミナを誇るステイヤー。

しかし、2000mのミドルディスタンスの最高峰とも呼べるこのレースが、距離が合わないというわけではない。
ここも十分に守備範囲なのだ。

レジェンドテイオーの手ごたえがなくなり、代わって外から先頭のポジションを奪いにかかるメジロアルダン。
そこに並んでいくスーパークリーク。
芦毛の馬体は2頭の背後に迫っていた。

その気配は悠も感じている。
だが、悠はまだ大きく動かない。
悠が動かないと見るや、岡江がメジロアルダンにゴーサインを出して先頭に躍り出た。

メジロアルダンの脚に余裕はある。
競り合いにはそう簡単に負けない自信がある上に毎日王冠より200m長い。
最後にハナ差でも残せば勝ちだ。
ガラスの脚に苦しんだメジロアルダン・・・
ようやくその脚が万全な時に来た絶好調。
どうしても勝たせてやりたかった。

そのメジロアルダンを悠は冷静な目で見ていた。
アルダンの後ろを追走するクリーク。
いや、追走してるのではない。
あえて先に動かさせたのだ。

後ろから迫るオグリキャップ。
だが、思った以上の脚は使っていない。
悠が予想した通り、展開にハメられた感があった。
それを確認してニヤリと笑った悠。
残り200m・・・
悠の手がようやく動いた。

クリークがアルダンに並びかける。
鞍上の岡江が全力で追う中、悠はクリークを追ってスッと追い越す。
先に行かせたのは、スピードもスタミナもアルダンより上なのを理解していたからだ。

アルダンと馬体を併せると、隣の岡江がチラッと悠の方を見る。
悠も岡江の方を見返し、ニヤリと微笑む。
日本屈指の名手と、それを追い越すとも言われる若き天才の追い比べ。

その後ろでオグリキャップは必死に追うが、メジロアルダンをとらえるのにも今回は苦労している感じ。

さらに後方、イナリワンも前走ほどの勢いがない。
4番手のヤエノムテキにも届かず、外から伸びてくるキリパワーのほうが勢いがいい印象すらあった。

ほんの少しメジロアルダンを交わして前に出るスーパークリーク。
岡江が必死に追おうと差は縮まらない。
どこまで行ってもそのほんの少しの差は詰めれない絶望感。
オグリキャップも南の剛腕で少しずつ差を詰めるが、詰め切れるスピードは無かった。
そのままスーパークリークが先頭でゴール。
2着のオグリキャップとの差は僅かだったが、それは永遠に詰められない僅かであると思えるぐらいスーパークリークの強さが際立った一戦だったのだ。


樹里は感無量だった。
育成時代から期待の大きな馬だったが、常に脚元の弱さとの戦いだった。
それがスタッフ達の努力でここまで来たのだ。

「おめでとうございます、お姉様」

感無量の樹里にそう挨拶してきたのは麗奈だった。
オグリキャップのオーナー代行として来ている立場だが、その笑顔に悪意等全く無い。
祐志に一緒に抱かれてレズプレイさせられてから、意気投合してしまって今や戦友のようになってしまっている。
何とも不思議な関係になったが、もうお互いわだかまりは全く無かった。
むしろ麗奈に懐かれている感すらあったのだ。

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