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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 314

先頭で抜け出すメジロアルダン。
同じタイミングで動いたウインドミルもしぶとく抵抗し、差はほとんどない。
その外からグランドキャニオンも追い上げ直線入り口から半ばまではこの3頭で先頭争いが繰り広げられる。

しかしグランドキャニオンの外からやってきた芦毛の馬体がその争いを一瞬で片づけようとしていた。
オグリキャップだ。

さらにはイナリワンも直線で一気に前との差を詰めていた。

イナリワンの脚は凄まじかった。
名手柴原が追うごとにグイグイと伸びて行き、瞬く間に前との差を詰めていく。
そして粘る3頭を纏めて抜き去る。

残り100m・・・
勝利を確信する柴原。
だが、これで終わりでは無かった。

剛腕南が追って一杯だった筈のオグリキャップ。
抜かされた事で闘志に火が点いたようにグイッと伸びたのだ。
限界を突破した走り・・・
イナリワンとの差を再び詰めていく。

いけるとばかりに南は全力で追う。
そうはさせじと柴原も追う。
剛腕同士の追い比べはゴールまで続いていく。
そして殆ど同時にゴール。
勝負は写真判定に持ち込まれたのだ。

ゴール後に映し出された2頭の馬体は完全に同体のように見え、ファンは歓声をあげる。
見た目には全くわからない。
しかし勝負師である名手2人にはどちらが勝ったのかははっきりと分かっていた。

柴原はあと少しだったな、と淡々と振り返りながら引き上げ、南はよく頑張ったなと相棒の首筋を撫でながら笑顔を見せる。

勝ったオグリキャップ、負けたイナリワンも強さを見せた。
3着のメジロアルダン鞍上の岡江は少し残念そうに撫でながら言う。

「キミも精一杯頑張ったさ」

勝負の世界は残酷だなと殆ど声に出さず呟く。
ガラスの脚も万全かつ充実期のメジロアルダン。
G1勝てるだけの素材は間違いないが、よりにもよってそれ以上の怪物が何頭も現れるのは運命の悪戯としか言いようが無かった。
岡江も長い現役生活で何度もそんな馬と遭遇してきたが、不憫に思えどそれが勝負の世界なのだ。

「だが、それでも可能性に賭けたいね」

まだここは前哨戦。
次の本番には2頭の怪物に更にもう一頭の怪物も加わってくる。
だが岡江もすんなりと負ける気は無い。
それが絶望的な戦いでもだ。


アメリカではノースウィンドが出走する。
地元サンタアニタ競馬場で行われるサンタアニタスプリント選手権ステークス。
グレードはG1であるものの、有力馬の殆どがブリーダーズカップスプリントに出走する為、そこからの脱落組が中心のレースとなる。
故に3歳短距離の総決算であるマリブステークスの前哨戦としては最適だった。

6ハロン戦に使うのは2歳時以来となる。
だがノースウィンドの能力とスピードからしたらこちらの方が向くだろうというのがクリスの見立てである。

そして今回も梓は樹里について妹の楓とともに現地でレース観戦となる。

(またこっち見た)

下見所でノースウィンドを眺める梓。
ノースウィンドの方も周回する度に梓の方をチラチラ見てくる。

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