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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 313

芽城牧場期待の良血馬であるメジロアルダンは、幼駒時代からその非凡な能力を発揮して関係者の期待も高かった。
しかし、同時にガラスの脚と称される脆い脚元の為にデビューも遅れに遅れ、皐月賞には間に合わなかった。

皐月賞に間に合わなかった陣営はNHKマイルカップを選択。
だが、そこでは惜しくも2着。
体調が上向いていた事もあり、厳しいローテながらダービーにも登録するが2着と惜敗。
レース後故障を抱え、一年の休養を挟む。

そして今年の夏前に復帰。
そこから2連勝を飾り秋のG1戦線に挑んできていた。
このレースに騎乗する岡江云く『脚元さえいければ上位2頭と勝負できる』と高評価な内容でこのレースを迎えていた。

だが、その上位2頭の雰囲気は他を圧倒していた。
半年の休養で更に充実した馬体となったオグリキャップ。
春のG1を2連勝し、荒々しく迫力を増したイナリワン。
どちらも初騎乗の騎手達だが、そのベテラン2人が跨って唸るぐらいの出来であったのだ。


レースはベテランの域に入ったレジェンドテイオーがハナを主張し飛ばしていく。
ウインドミルが2番手を進み、メジロアルダンとグランドキャニオンが3番手で並ぶ。
しんがりの一歩手前にイナリワンで、そのすぐ前がオグリキャップ。
初騎乗のベテラン2人は末脚の爆発力を期待して後方からじっくり構える。

レジェンドテイオーの逃げは1000mの通過が59秒2と速め。
オグリキャップもイナリワンも道中は動かない。

初乗りのベテラン勢2人だが、初乗りであれ乗れば馬の実力ぐらい大概わかる。
そんな彼らのキャリアの中でも、間違い無くトップクラスの馬だった。
南が対戦相手として見てきたオグリキャップは、恐らくこの距離ぐらいが最も実力を発揮できると思っていた。
澪のような柔軟な乗り方は彼の騎乗スタイルからはかけ離れているが、追い比べだと誰にも負けない自負がある。
去年の秋に自分がタマモクロスと共に負かした経験を踏まえ、その爆発力を発揮させる事が自分の勝ちパターンだと考えていた。

そしてイナリワンの柴原も現役屈指のベテランだ。
同期の岡江程の器用さは無いが、どんな馬でもきっちりと乗りこなす上手さは持ち合わせている。
特に長距離戦のペース配分や駆け引きの巧みさで長距離の魔術師と称される事もある。
そして何よりも、追い比べなら南と共に現役トップクラスだ。

ただイナリワンは距離が長ければ長い程良いタイプではある。
この点では適距離のオグリキャップに劣る。
だが末脚の爆発力はむしろオグリキャップを凌ぐと言うのが柴原の率直な感想だった。

8頭が大欅の向こう側を通過する。
先頭レジェンドテイオー、2番手ウインドミル、3番手メジロアルダンとほとんど等間隔で続いていく。
その後ろにグランドキャニオンとマイネルダビデだが、オグリキャップがその外からゆっくり2頭に被せるように上がっていく。

先に動いたオグリキャップ。
一方イナリワンはまだ後ろから2番手でじっとしたままだ。

一方、先頭を飛ばして大逃げしていたレジェンドテイオーは、最終コーナー辺りで手応えが怪しくなってきていた。
スローな逃げに持ち込めずハイペースで飛ばしてしまった事が原因だが、同じく先行するメジロアルダンの岡江からすれば想定内であった。

岡江はメジロアルダンを高く評価していたし、二強に匹敵するレースができると考えていた。
だが、爆発力勝負となれば分が悪いのも織り込み済みで、故に先手を取って勝負していく戦術を考えていたのだ。

「信じてるよ!キミの力を見せてごらん!」

そう言いつつ岡江は直線に入ると、メジロアルダンにゴーサインを出す。
それに隣のウインドミルも呼応し、2頭は一杯となったレジェンドテイオーを交わして先頭に立つ。
府中の長い直線は先行馬にとって果てしなく長い。
だが、アルダンは力強く駆けていく。
G1級と言いながら脚部不安に悩まされてきたが、ようやくその本領を発揮できるようになった喜びをぶつけるように、メジロアルダンは必死に直線を駆けていく。

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