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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 312

直前の単勝オッズで1.4倍。
G Iホースのため59キロという重い斤量を背負うがここは負けられないという気持ちで厩舎も送り出してきた。

10頭立て。
3歳馬のファーストホームがハナを切り、ハツシバエースとナムラモノノフが2番手で並ぶ。
ミスターシクレノンがその後ろでさらにスーパークリーク。
ちょうど真ん中のポジションだ。

実戦での久々の背中の感触を確かめながら悠はクリークを走らせる。
元々凄く柔軟で柔らかい走りをする馬で、乗り心地は極上だった。
ふっきしてからもその乗り心地が変わらない事に安心しながらも、復帰前に無かった力強さも感じられた。
それは、脚元の不安が無いと言う事・・・
脚元を気にしつつ誤魔化して走っていた去年と違い、この馬の能力を充分に発揮できる状況なのだ。

しかし悠は逸る気持ちをグッと抑える。
このメンバーなら絶対的な能力差で前半から押し切って勝つ事も可能だろう。
だが、ここは本番ではない。
このレースの先・・・
府中の2000mではオグリキャップとイナリワンとの勝負が待っている。
調整目的でもあるが、その為のデモンストレーションの場でもあった。

道中は中団でジッと息を潜めるように走る悠とクリーク。
だが、ミスターシクレノンの松中もハツシバエースの岡友も後ろからの強烈なプレッシャーを感じずにはいられなかった。
それぞれ馬の状態は良いにも関わらず、凄まじく重たい空気・・・
強烈なプレッシャーがそう感じさせているのかもしれない。

ミスターシクレノンは春の天皇賞で2着、宝塚記念でも3着した古馬の中では実力派。
ハツシバエースは7歳のセン馬ながら前走で初重賞制覇。
そんな2頭を前に、GT馬としての力を見せつけてやろうというのが悠の思いだ。

4コーナーを前に、ハツシバエースが逃げるファーストホームに並びかけ、さらに先頭に立つ。
ファーストホームの方はここで一杯になり、代わってミスターシクレノンが2番手に押し上げる。
スーパークリークは4番手。

スムーズに上がってきたが、悠は何も指示していない。
クリークが流れを読んで位置を上げたのだ。
馬の方がレースを把握している・・・
それならば騎手は邪魔してはいけない。
この程度のメンバーなら尚更だ。

直線に入り各馬必死に追う追う中、悠の少しの反応だけでクリークはグングンと加速していく。
必死で追う先行馬を尻目に、瞬く間に追い越して先頭に立つ。
ミスターシクレノンが必死に食らいつくが、それすらクリークはあえて並走してるように少し前にだけ出て走り続ける。
必死で追うのだが、追わないクリークに縋り付くのがやっとであった。

そのまま後続を引き離しゴール。
3着には大差をつけ、おまけにレコードまで出してのける。
それも復帰戦でだ。

勝った悠はさも当然と言った顔でクリークを撫でて労う。
むしろやり過ぎないように抑えていたぐらいだが、復帰したクリークは去年より更にスケールアップして帰って来たのだ。

脚元にも問題はなく次は秋の天皇賞と陣営も即決したのだった。


同じ日、府中。
毎日王冠は8頭立てと京都大賞典よりもさらに少頭数のレースとなった。
それでもオグリキャップとイナリワンが初めて対決するとあって詰めかけたファンはGT並みの空気。

澪が産休に入ったこともあってオグリキャップには南が、悠はスーパークリークを選んで京都にいることからイナリワンには柴原が騎乗する。

オグリキャップは断然の1番人気、対してイナリワンは3番人気。
2頭の間には奥原が管理するメジロアルダンが割って入る形となった。

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