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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 311

さらにオータムリーヴスも寛子の元へと戻り調子を開始する。
当初はセントウルステークスから始動というプランを立てていたが春GT3戦の激戦が応え、さらに精神面でも問題を抱えていたことから一番早くても秋始動戦はスプリンターズステークスとなる。
とはいえ、寛子も焦らず急がず、復帰戦は流動的だ。

国内が慌ただしくなったことで、樹里は渡米こそしなかったものの、サンデーサイレンスはブリーダーズカップクラシックに向けた前哨戦・スーパーダービーを勝利している。

メンバーの薄い3歳限定戦ながら、その走りとタイムは圧巻。
ベルモントステークスの敗戦から若干機嫌を損ねていたサンデーサイレンスだったが、レース間隔を開けてリフレッシュした事で機嫌を直したようだ。
機嫌良く走ればこれぐらいはやるわと電話越しにクリスは笑いながらそう樹里に言ったのだ。
これでサンデーサイレンスの次走は、いよいよブリーダーズカップクラシック・・・
そこでは恐らく古馬の強豪だけでなく、イージーゴアとの再戦となるだろう。


一方、涼風ファームでは一歳馬の馴致が本格化していた。
馴致は英語で言うとブレーキング。
止めるのブレーキではなく、壊すのブレイク。
今まで馬の中でのコミニティーで生きていた子馬達の関係を壊し、人と馬の関係を築いていくのがブレーキングな訳である。

ただ、それは無理矢理人間に従わせるのではない。
子馬達に人間に従った方が良いよと導いていく作業なのだ。
昔は競馬先進国でも無理矢理従わせるやり方ではあったが、技術や知識が上がった結果、関係構築を馬の自主性で行われるようになったのだ。

ただ、日本ではまだ一般的ではない。
馴致や調教も無理矢理従わせる方式を取る場合が多い。
そんな中、涼風ファームではラルフやジョンによりアイルランド仕込みの馴致が行われている。
その結果は、今まで走る馬が生産できず倒産しかけていた涼風ファームが重賞常連牧場になっていった結果で出ていたのだ。


そんな今年の一歳馬の優等生はウラカワミユキの88だった。
多少甘えん坊で我の強い所があったが、人間相手には従順かつ物覚えも良い。
尚且つバランスの良い馬体で欠点も無く、能力は水準以上。
生産馬ではないが、期待の一頭だった。

逆に最も劣等生がレーシングジーンの88。
人懐っこく臆病な小柄な馬は、兎に角反抗的・・・
人懐っこい癖に馴致には全く従おうとしない。
ラルフもジョンも珍しいぐらい手こずっていた。
小柄ながら時折見せる爆発的なスピードは魅力なのだが、これだけ不従順だと競走馬になれないレベルと言ってよかった。
だが、ラルフもジョンも諦めず、粘り強く接する。
むしろ2人共、この厄介なミッションを楽しんでる風さえあった。

従順な優等生はある意味走って当たり前。
むしろ問題児をしっかり手懐け大成させることがホースマンとしての醍醐味だと思っているフシがこの兄弟にはあった。

そんなラルフとジョンの粘り強い教え込みにレーシングジィーンの88は少しずつ心を開いていくのだった。

余談だが、この優等生と問題児の名前はジョンの提案で梓や楓、涼風ファームの子供たちに案を募ることになった。

名前はデビューまでに決めれば良いと言う事で、それまでに良い案があれば採用すると言う事になったのだ。


秋競馬がスタートして、最初のビッグレース。
スプリンターズステークスにオータムリーヴスは何とか間に合ったものの、万全とは言い難い状況だった。
精神的にも癇性が強くなり、不安定な状態・・・
それでもレースになればそれなりの結果を出すものの、勝ったバンブーメモリーに離された4着。
勝ったバンブーメモリーの内容が良かっただけに、むしろ健闘したと言ってもいいかもしれない。

春の安田記念を勝ち短距離王に君臨したバンブーメモリー。
次走はスワンステークスを使ってマイルチャンピオンシップに向かう。
オータムリーヴスも全く同じローテーションの予定で、寛子も次のレースまでには立て直したいと語っていた。


その次の週は、いよいよスーパークリークとオグリキャップの復帰戦だ。
京都大賞典出走のスーパークリークは悠を背に一番人気。
ミスターシクレノンとハツシバエースが対抗馬であったが、明らかにクリークと比べて格落ち感があった。

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