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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 310

スタートも上手くダッシュ力もあるアクアパッツァなら、先頭に立ってポテンシャル任せで押し切る新馬戦のようなレースも可能だと悠は思っていた。
だが、ここが本番てはなく、あくまで本番はクラシック。
控える競馬を覚えれば、もっと強くなると思いこの戦術を取ったのだ。

この戦術は寛子がそう考え、悠もその考えに沿って調整してきたものだ。
騎手としては天才的な悠だが、寛子の調教師としての知識や眼力には素直に敬意を持っている。
と言うか、自分だけが独占できるお母さんみたいな存在として慕っている部分が殆どで、ママに褒めて貰いたいから言う事を聞くと言う部分が強かったりする。
まぁ、この2人は相当深い肉体関係があるのだが。

故に悠のレース時は調教師と言うよりママの心境で見てしまう寛子なのだが、当の悠の方は予定通りの騎乗を完璧にこなしている。
何より、この若さで無駄の無い美しい騎乗フォームで、どんな状況でもブレない。
調教で何頭乗っても、この美しいフォームから崩れないのは寛子の知る限りでも余りいない。

アクアパッツァは勝負どころでじわじわと外に持ち出しながらポジションを上げていく。
内にいたイクノディクタスがやや手応えが悪くなり、鞍上の手が激しく動く。

ハギノハイタッチは軽快に逃げ、リードを保っている。
トシグリーンがそれに迫ろうと追い出す。
アクアパッツァはその外からグーンと脚を伸ばしてくる。

直線半ばからはこの3頭の追い比べとなる。

前半、2歳短距離戦らしく一本調子でガンガンに飛ばしていたツケ。
牡馬2頭にスタミナ面で劣るイクノディクタスはそのハイペースに巻き込まれてしまったのだろう。
いくらポテンシャルが高くとも、これだけ削られてしまえば仕方は無い。

逆に後ろから溜めていたアクアパッツァにとっては好都合。
同厩舎同期のディザイアにこそ瞬発力は劣るものの、長く良い脚が使い続けれる良さはこちらが上だ。
トシグリーンを捉え交わし、ハギノハイタッチにも競って頭だけ前に出る。
丁度その位置でゴール。
抜群の勝負強さを見せたのだった。

「困ったわねぇ・・・どちらも2歳チャンピオン狙えちゃうわ」

呟くように言ってニコニコの寛子。
悠が勝ってご機嫌なのもあるが、G1の2頭出しでどちらも本命候補になりそうな状況にウキウキしない調教師などいない。
アクアパッツァ、ディザイア双方共にもう一戦使って阪神ジュベナイルフィリーズを考えていたが、どちらも甲乙つけ難いポテンシャルなだけに寛子にとって嬉しい悩みが増えたのだった。

アクアパッツァは悠、ディザイアには松中と関西、いや競馬界屈指のイケメン?王子様的な若手が主戦として手綱を取るだけに、ここからファンの人気も得るだろう。

「まあ、ファンタジーステークスとアルテミスステークスよね」
寛子は早くも秋に向けた策を練る。
レース後には、もちろん樹里からも明るい話が聞けた。


夏競馬が終わり、秋開催が始まる。
涼風ファームで休養していた樹里たちの所有する実力馬たちも栗東、美浦に帰厩し調整を始める。
オグリキャップとスーパークリークも復帰戦に向け動き出していた。

どちらも順調に調整が進んでおり、オグリキャップは毎日王冠、スーパークリークは京都大賞典を復帰レースの予定としていた。

その2頭が休養していた涼風ファームでは、スーパークリークはデビューまでを過ごした地だったからリラックスしていた。
人間に対しては素直で従順な所がありつつも、プライドが高く我が儘も言う所があるクリークは、百合の世話がお気に入りだったようで、彼女と居るとご機嫌な様子だった。

オグリキャップの方は慣れぬ場所だった筈だが、まるでずっと居た子のように牧場では振る舞い、特に温泉がお気に入りだった。
一度入ってハマったのか、2日目からは自分で進んで行くぐらいでのぼせる心配するぐらいまで浸かっているぐらいだった。

そんなリフレッシュ期間を挟んだ事で2頭共に元気に帰厩。
他には春後半に不調になったプラニフォリアも同じくリフレッシュ休暇を終えて帰厩。
こちらは府中牝馬ステークスからエリザベス女王杯を走って年内で引退予定としていた。

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