PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 30
 32
の最後へ

駆ける馬 32

表彰式の壇上から降りて樹里は澪に声をかける。

「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ…おかげで私も初めて重賞を勝てました」
「私も初めての重賞勝ちです…一生の思い出になります」
「ああ…」

お互い頭を下げる樹里と澪。

レース中の絶頂、のせいかまだ心ここにあらず、のようにフワフワしている様子の澪を樹里は心配そうな目で見ていた。

そして写真撮影で澪が跨る。
少しだけ吐息が漏れ、股間がまた濡れる。
表面的な汗は拭えたが、そこを綺麗にする余裕は無く湿りっぱなし。
それを加味して生理用パッドを当ててはいるが、やはり違和感は半端無い。
寛子からは『表情を気にしないと駄目よ』とは言われているし、一度達してるからか表情を気にする余裕は生まれていた。
しかし、公衆の面前で辱めたスターライトブルーをどうしてくれようか的な憤りは持ちつつも、オンナにされてしまったせいかどこか甘くなっている自分も感じていた。

そんな澪を他所に、写真撮影が始まる。
汗だくで上気して赤い頬、恍惚な表情が垣間見えて、翌日の新聞には『涙と歓喜の重賞制覇』なんて好意的に書かれたのはある意味澪にとって救いであった。


写真撮影を終えると、仁藤は早速樹里に話を持ちかける。

「スターライトブルーの自走ですが・・・」
「はい、先生のいいようになさってください」

仁藤の表情が綻ぶ。
この返しは調教師を全面的に信頼して任せてくれる健三と同じ答えだった。

健三は良い意味で金持ち道楽の馬主だった。
勝てば関係者と散財、負ければ労い。
決して調教師に注文を付ける事は無く、全面的に信頼する。
樹里が口にしたように『先生の良いように』と言うのを口癖のようにしていた。
それ故に全面的な信頼に応えなければならないと仁藤も色々頑張ってきたものだ。
勿論、健三のような馬主ばかりではなく負ければ罵倒し、ローテーションや騎手に注文を付ける馬主もいる。
仁藤はそれも程度も問題だと思っているし、健三なんかにはもっと野心的であってもいいだろうとは思っていた部分もあった。

「次走なのですが・・・勝ちに行くなら朝日杯、挑戦するならホープフルを考えています」

そんな仁藤の提案に樹里は少し考える仕草をする。
そしていつもの柔らかい微笑みを見せた。

「どちらであれ、スターライトブルーの将来を見据えた選択であってくれれば良いと思っています」

成る程と仁藤は呟く。
樹里は健三より挑戦的な性格なのだろう。
そして馬主の本気度も感じられる言葉だ。

「まあ、1か月あるのでじっくり調整しながら考えていこうと思ってます」
「楽しみにしています」

やりやすい部分もあれば、重大な責任を感じる部分もある。
それだけやりがいは産まれる。

「まあ、澪に聞くのはまた今度でええか」

ジャパンカップの週、樹里は涼風ファームを訪れる。
スターライトブルーの勝利報告のためで、真奈と幸子が笑顔で迎えてくれた。

今回は週末だと言う事もあって、子供達を連れての牧場訪問だった。

「おめでとうございます、オーナー」
「皆さんのお陰ですよ」

北海道はもうすっかり冬のシーズン。
ゲストハウスの暖炉のあるリビングに全員が集まっての祝勝会。
それぞれの子供達も少し早いクリスマスが来たようなはしゃぎ方で、それを奈帆達年長組が面倒を見ていた。

「あの人達の執念を見た気がします」

幸子がしみじみと口にしたあの人・・・
スターライトブルーは彼女達や樹里の功績ではなく、慎太郎と健三の遺作だ。

「適距離はマイルか中距離ぐらいですかね?」
「仁藤先生は体格的にも血統的にもクラシック路線で活躍できるだろうとおっしゃっていましたけど」

やはり重賞取って良かったと言う話で終わらず、話題は将来の展望の事になる。
それだけの器だと樹里も真奈も思っているからだ。

近年、中長距離で活躍馬を出すパーソロンは、そもそも活躍馬は短い距離に多かった。
ただスタミナ豊かな母系と合わさると、母系のスタミナを活かしつつスピードも受け継がせるタイプだ。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す