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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 31

既にリードは7馬身程。
これは充分過ぎる程のリードだ。

直線に入っても澪は持ったまま。
後ろを振り返らなくても迫って来られてる感は無い。
このまま行ける・・・
そう思うと心がゾワゾワとしてきた。

だが、残り200m・・・
スターライトブルーの力が抜けたような感覚。
思った以上に早くスタミナが切れた。
前回のクローバー賞は最後まで手応えはあった。
だが、それは平坦なコースだったからこそ。
坂のある中央のコースだけに消耗は激しかったようだ。

やはり、脚を溜めるレースをしなければ苦しいのか・・・
そう思いながら澪は鞭を入れる。
それで少し手応えが戻る。
しかし、澪の耳にも後続が迫ってくる音がしてきた。

必死で追う澪。
もう余裕は全く無い。
必死に追うごとに子宮にガンガンと来て、それに耐えるのも辛い。
残りは100mを切る。
今までで一番辛い。
こんなに100mが長いと感じた事は無かったのだ。

それでもなんとか逃げ切った。
ゴール板を通過した時には2着のタニノブーケが半馬身差くらいのところまで迫ってきていた。

装鞍所に引き上げてくるまでのクールダウン。
スターライトブルーは脚が止まってしまっていたがそれでもレース後は涼しい顔。
逆に澪は生きた心地がしない様子。
ゴールした後に絶頂しちゃったのでは、と思ってしまうほどの衝撃に襲われた。

検量に降りる時に足がふらついた。
寛子が支えてくれなければこけていたかもしれない。

「お疲れさま・・・重賞制覇おめでとう」
「ありがとうございます・・・大変です、この子」

疲れ切った顔で寛子に応える澪。
アレのせいで普通のレースの倍は疲れたかもしれない。

仁藤調教師も怒る事は無かった。
むしろ『重賞初制覇や、喜んだらええ』と労うぐらいだった。
そして澪からレースの状況を聞きながら思案する。

「脚、持たんかったかぁ・・・」
「すいません、抑えれませんでした」
「いやええ・・・それがあの馬の持ち味やしな」

仁藤はさてどうしたものかと呟き思案する。
来年のクラシックを見据えて、ホープフルステークスを選択したいと言う希望はある。
だが、現状のベストは朝日杯フューチュリティステークスだろう。
ポテンシャルで言えば2000mはこなせるはずだし、中山コースの2000mを体験できるホープフルステークスは負けても価値はある。
だが、2歳戦であれG 1を勝てるかもしれない朝日杯も選択肢としてはありなのだ。

朝日杯はここから1ヶ月先で、阪神のマイル戦。
今日のレースから見たら、仁川の最後の坂で止まることも充分考えられる。
ホープフルステークスを選んだとしてもここから1ヶ月の調整と調教方法のプランを練り直す必要もあるかもしれない。

「あとはオーナーの判断に委ねるかな…」

レースを終えて寛子にブラッシングされるスターライトブルーの姿を見ながら仁藤はやれやれとため息をついた。

そして、ブラッシングしてもらい綺麗になったスターライトブルーの表彰式と記念撮影。
他の馬主から祝福責めだった樹里も現れ、仁藤調教師と共に準備に入る。

「オーナー、おめでとうございます」
「仁藤先生のお力あってこそ、ありがとうございます」
「いえいえ、澪もよく乗ってくれました」

頭を下げ合う樹里と仁藤の視線の先には、こちらも祝福責めだった澪がいた。
肌寒い季節にも関わらず髪までぐっしょりと汗で濡れたままの澪を見て2人は目を細める。

「激闘だったみたいですね」
「ええ・・・走り出すと抑えの効かない馬でして・・・」

澪が何に一番疲労したかは露知らず、そんな話をした樹里と仁藤。
仁藤は『後程、その事でお話しを』と言った所で、そろそろ始まりますと係員から声がかかる。

澪にとっては初の重賞勝利。
その嬉しさはひとしおだし、絶対に忘れないだろう。
まさかこんな風に重賞制覇するとは・・・
気付かれていないと思うが大衆の面前でイカされた上で重賞制覇とか誰にも言えない。
そして、その主はそんな事あったっけと知らん顔であった。

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