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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 304

7頭でのレースは相手関係的にもディザイア以上はおらず、比較的楽な環境とは言える。
だが・・・

各馬スムーズにゲートインしていく中、ディザイアは嫌がって入ろうとはしない。
元々馬の特性として狭い所が苦手で、ゲートとは相性は良くない。
それを訓練して入れるようにしていく訳だが、元々苦手なものであるから訓練しようと中々払拭できない馬も多い。
ディザイアも当然、牧場からゲート練習はしてきてはいる。
だが、元々我が儘気質である為にこれでもマシになった方なのだ。

流石に引いても押しても入らないディザイア。
目隠しを使ってようやく入る。
これが初めてのレースなのだ。
松中も経験上、このタイプの馬が興奮するのは織り込み済みだし、それは悪い事で無いと思っている。

そしてスタート。
ディザイア一頭だけが出遅れ。
松中に焦りは無い。
前が有利な競馬場とは言え、出遅れが致命的な程の短距離ではない。
それに調教で跨って身震いした程の瞬発力がこの馬にある事を知っている。

スタート後のペースは上がらず、出遅れたディザイアもすぐに馬群にとりついた。
先を行く6頭はひと塊で、一番後ろにディザイア。
折り合いを欠くようなところは一切見せず、一番後ろで脚を溜める。

直線に入るまで他馬も動きは見せず。
4コーナーを一番外から回ったディザイアに松中は軽く手綱を動かした。
そこから馬自身が加速を開始する。
一瞬で3頭ほどを交わす。

物凄い加速力だ。
これまで何度か切れる脚を持った牝馬に乗ってきた松中だったが、このクラスの切れ味は未体験・・・
父親のミスターシービーが見せた切れ味に匹敵するように思えて、乗っていてゾクゾクしてしまう。

そしてそのまま残りの馬も並ぶ間も無く交わすと、差をどんどんとつけてゴール。
出遅れからの鮮やかな勝利で初戦を飾ったのだ。

この結果から次走は札幌2歳ステークスに決定。
牝馬ではあるが、この内容なら本命候補間違い無いだろう。


そして8月に入り、アメリカではノースウィンドが重賞初勝利を賭けてパットオブライエンステークスに出走する。
樹里は夏休みを兼ねて子供達と共にカリフォルニアへ。
真夏の太陽が降り注ぐカリフォルニアは暑いが、日本のようなじめつく暑さではなく、時折吹く風は爽やかであった。

舞台はカリフォルニアのデルマー競馬場で行われる1400mのダート戦。
ノースウィンドは短距離からマイルが最も能力を発揮させられるとクリスは見ていて、地元で手頃な重賞を選んで登録したのだ。

ここまでは同世代の馬が相手だったこともあって能力で上位まで押し上げてきた感じ。
これからは年齢関係ない対決になるわけだからできるだけベストの距離を走らせたいと言う思いがクリスにはあった。

樹里の長女、梓は先日9歳の誕生日を迎えた。
今までは母に遊びでついて行ってお馬さんを見に行く感覚だったのが、最近は次第に変わっているように自分でも感じていた。
私もいずれはお母さんのように……まだまだ遠い気はするけどそんな気持ちがあった。

(どのお馬さんが凄いとか全然わからないけどね)

梓は下見所で周回するノースウィンドをじっと見つめていた。

すると、ノースウィンドが梓をジッと見返してきたのだ。

「馬は賢いから、梓が自分の事に関心があるのが分かるのさ」

梓にそう言ったのは祐志。
彼女にとっては大好きなパパである。
今回はバカンスを兼ねているのもあって、祐志が同行していた。


9歳にもなると、両親が離婚した事もその意味も分かる。
だが、梓が父を好きなのは変わっていない。
兎に角、父はカッコいいし優しい。
母も父と居る時は特にご機嫌で大好きなのだろうと言うのも理解できている。

なら尚更理解できないのは、その両親が離婚している事だ。
父がどう考えてるか分からないものの、母を嫌ってる様子は無いし、何より母は父の事が好きで他の男性は眼中に無い。
涼風ファームのエリック達も母と仲の良い男性達だが、父と相対する母とは感じがかなり違う。
それだけに父と母の事は謎だし、理解はできない。
ただ何となくそれを聞いてはいけないのが分かっているぐらいだ。
気にはなるが、両親を困らせる考えは浮かばない梓は怪訝に感じながらもそれを振り払ってノースウィンドを再び見た。

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