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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 300

2400mという未知の距離でも負けないと言う自信はあった。

軽快に飛ばす逃げ馬を見ながらサンデーサイレンスは2番手でレースを進める。すると向こう正面でレースは動く。
後方待機策だったイージーゴアが動きを開始してサンデーサイレンスのすぐ後ろまで差を詰めてきたのだ。
マークされる展開。
サンデーサイレンスがこれにエキサイトしないようにエイミーは宥めながら先頭を追いかける。

だが、エイミーが宥めようとしても今日のサンデーサイレンスに落ち着きは無い。
むしろ大事なレースと分かっているから気負っているように見えた。
それが体力を消耗させてしまうのだが、逆に抑えると臍を曲げるのもサンデーサイレンスだ。
コーナーに入るとエイミーも覚悟を決めて抑えるのを諦めたのだ。

前の馬を交わし先頭に立つサンデーサイレンス。
予定より早いがこのまま突き放す気で先頭に立つ。
イージーゴアはそれを見ながら同じように付いていく。
デイリーも腹を決めていた。
相手がどう出ようとスタミナ勝負に持ち込むつもりだ。

4コーナー辺りで2頭が並ぶ。
そして並んだまま後続を引き離していく。
加速していくイージーゴアとそれに負けじと競っていくサンデーサイレンス。
ゴールまでこのままマッチレースかとスタンドが盛り上がる中、レースは最後の直線を迎えた。

プリークネスステークスの再現か、と思わせる2頭のマッチレース。
馬体がほぼ合ったまま直線に入るが、スタンドの期待感とは裏腹に、直線の追い比べではイージーゴアがサンデーサイレンスに差をつけていく。
エイミーも必死で追うが、馬が力尽きてしまったのだ。
それでも3番手以降は大きく離していたのだが…

イージーゴアはそのはるか前でゴールし、最後の一冠で雪辱を果たしたのだった。

距離の限界・・・
もうこればかりは仕方がない敗戦だった。

歓喜に沸くイージーゴア陣営を見ながらクリスは落胆する事無くエイミーとサンデーサイレンスを迎える。
仕方ないと言う表情のエイミーに対し、負けた事に怒るサンデーサイレンス。
疲労困憊なのに怒れる精神力には脱帽するが、今回ばかりは勝った方を褒めるべきだ。

「むしろ良くやったと言うべき・・・本質がマイラーだと言っても彼の強さは本物なのだから」

主要レースの殆どが2000mまでのアメリカダート戦線において、2400mのベルモントステークスは異質な存在である。
故に多くの二冠馬がここで夢が潰えた訳だが、それは二冠馬の価値を落とすものではない。
むしろここからが本番なのだ。

「そう、本番は秋のクラシックよ」

クリスの言うクラシックは、ブリーダーズカップクラシック・・・
アメリカ競馬における最高峰のレースだ。
ここを制してこそ、最強馬の称号が得られる。


イージーゴアの雪辱と、サンデーサイレンスの無念をスタンドから見つめていた澪と樹里。
沸き立つ観客たちの中で2人は顔を見合わせる。

「残念でしたね」
「これも競馬ね」

「でも、あんな馬は初めてでした…馬房の前でちょっと身体が震えましたもん」
「私もよ」
「あの仔、たぶんもっと凄い馬になりますよ」

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