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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 297

ガステリアだ。
一気にごぼう抜きすると、瞬く間に先頭集団へと迫る。

思い切り追いながら澪はオグリキャップを思い出していた。
側から見た強烈な末脚は全く一緒だが、乗っている方からすれば全く異質だ。
オグリキャップは深く沈み込むような体勢で低く跳ぶような走り・・・
柔軟な筋肉と相まって乗り心地の良い馬だった。
加速が最初もたつく感がある分、逆に言えばスムーズで追い出すと心地良さもあった。

一方、ガステリアは追い出しても体勢は高い。
跳ぶと言う感覚は無く、四肢で地面をかき込みながら走る感があり、硬さもあるから乗っていて突き上げが腹にズシンと来る。
更に一気にトップスピードに加速するタイプだから、追い出すとガツンと言う衝撃が来るのだ。
まさにパワーで走ってる感が強い。

その上、ロングスパートも出来る。
トップスピードに乗ってからもグイグイと走り、とうとう先頭を捉え・・・
そしてぶち抜く。

馬群の内から抜け出して勝った、と思ったところに大外から巨体が交わしていく。
ウィナーズサークル鞍上の郷家はガステリアの姿を見て

「アレはなんなんだろうな。まるで化け物みたいだよ」

と言って苦笑するしかなかった。

澪にとっては初めてのダービー制覇。
渾身のガッツポーズにスタンドが沸き立つ。

騎手としての最高の栄誉・・・
特に調子を落としている所で取れた事が喜びを倍増させていた。

そしてその喜びは澪だけではない。
奥原も渾身のガッツポーズで大声を上げてしまっていたし、樹里も喜びの余りに涙が止まらなかった。
北海道でもテレビ観戦の涼風ファームでも大騒ぎになっていた。
だが、それだけの事なのである。
全ての競馬関係者がダービーを勝つ為にやっていると言っても過言ではないのである。
故に最高の一年になると、関係する者全てがそう思ったのだった。



だが・・・
そうは上手くいかないものである。

ダービー制覇の勢いでここから巻き返しと思っていた澪だったが・・・
直後に妊娠が発覚。
宝塚記念の後に結婚式を控えている身だし、毎日のようにヤリまくっていれば出来て当たり前なのだが、流石に予定外だった。
これにより澪は翌週から全休・・・
嬉しいのか悲しいのかよく分からない状況となってしまったのだ。

ダービー制覇の祝賀会で盛大にお祝いされた中でも体調の異変は感じていた。でもまさかだった。
祝賀会から帰宅して疲労とともに嘔吐。
お酒を飲んだわけでもないのに…

そこで念のために検査をしたら妊娠が判明。

澪は寛子や愛美、それに樹里にも連絡し相談した。

「休んでいる間しか出来ないこともたくさんあるから」
樹里は澪に二重の祝福をするとともに、今度一緒にアメリカの競馬を観に行かないかと提案した。
サンデーサイレンスが出走するベルモントステークスだ。

勿論、澪はその話を断る訳は無い。
こうして澪と共にアメリカに渡る事となった樹里だが、この旅はトラブル続きとなったのである。


まず初めのトラブルは所有馬だった。
ダービーの激走直後のガステリアが屈腱炎を発症。
状況も余り良く無く、一年以上の長期離脱は確実となった。

それだけではない。
リトルウィングも繋靭帯炎を発症。
こちらは馬齢と症状を見るに復帰は難しいかもしれないとの事。
最終決断は年末まで状況を見てとなったが、宝塚記念に向けて好調であっただけに関係者の落胆も大きかった。

そして、今年デビュー予定で入厩済みだったセントオーキッドの87。
マルゼンスキー産駒で大物だと期待された牝馬は、キャンペーンガールと名付けられデビューに向けて調教中だったが・・・
洗い場で暴れて骨折。
かなり重度で一時は生命の危機とまでなったが、わざわざトレセンまで駆けつけたエリックの治療で手術は成功した。
だが、恐らく競走馬としてのキャリアは断たれてしまうだろうとの事だった。

そんなアクシデントがあって、ニューヨーク入りした樹里達。

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