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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 295

騎手と言う職業を志してから、初めて出会った最高の相棒だ、そうエイミーは感じていた。
ウイニングランをするサンデーサイレンス。
その顔は誇らしげに映っているようにエイミーからは思えた。

「本当に凄い仔ね」

3着ノースウィンドの鞍上クロエ。
ケンタッキーダービーでは手ごたえを感じる健闘だったが、今日のレースは完敗だったと振り返る。

ケンタッキーダービーでも少し距離が長い気がしたが、距離が少し短縮したここでもその感があった。
本質的にマイルぐらいが合う気はしているだけに、次のベルモントステークスはこの結果から見れば長過ぎるだろう。
故にノースウィンドの方はベルモントステークスは回避して別路線・・・
ひとまずはマイルの重賞に目標を定める事になる。

そしてサンデーサイレンスの方は、三冠に王手。
こちらも距離延長に若干不安があるが、このレースの内容を見る限り問題は無いだろう。
いよいよ、ダークホースでもヒールでもなく、堂々と本命として次のレースに挑む事ができるのだ。



アメリカで二冠馬が誕生して暫く。
日本でも同じ漆黒の馬が二冠に挑戦しようとしていた。

ガステリアは皐月賞以来、順調に調整してこれていた。
体調も上向きで、食欲も旺盛。
調教でも好タイムを連発し、馬体も絞り込めてきている。
ダービーに向けて視界良好そのものだった。

だが、主戦の澪はそうではなかった。
皐月賞を勝ったものの、勝率勝利数共に過去最低。
今年は乗り鞍を絞っているのもあるが、勝率を減らしている事が最低の勝利数の原因だった。

特に春シーズンになってからが酷い。
これまで何度か調子を落とした事はあったが、ここまで酷い事は今まで無かった。
これは完全にスランプと言うより、体調を崩しているのがその要因だった。

本人も原因は全く分からない。
常に悪い訳では無く、たまに酷く体調が崩れる。
それが開催日近くであるとモロに影響が出てしまっていた。
現状、まだ彼女への信頼感は揺らいでいないので大幅な乗り鞍減少は無いものの、このままならそれもありえるかもしれない心配はあった。

奥原厩舎でも澪の不調は知っていたが、奥原自身が彼女を信頼しているからダービーも引き続き澪に任せる方向だった。
澪からも流石にダービーは乗りたい意思も強い。
いや・・・
全ての騎手がダービーに出たいと思っている。
だが、それは選ばれた者だけしか出れない崇高な舞台なのだ。
この舞台に出て、更には勝ちたい・・・
澪とてそれは同じだった。


故に若干の不安を抱えながらのダービー当日。
ガステリアは堂々の一番人気であった。

皐月賞馬が抜けて人気。
道悪の中での圧倒的なパフォーマンスを見たら当然とも言える支持である。

ただし馬場の影響も考えられてか、それ以外の皐月賞上位組は能力に疑問符がついてしまい、2番人気は未勝利から3連勝で臨むロングシンホニー、3番人気がマイネルブレーブ。
皐月賞の2、3着馬ウィナーズサークルとドクタースパートはその次という評価だった。

そして2歳チャンピオンにして前年のダービー馬、サクラチヨノオーの弟、サクラホクトオーも大きく人気を落としていた。

良血と言うだけでなく、兄を凌ぐ豪脚で期待されてきたホクトオーであったが、不良馬場で全く走らず・・・
しかも、今年のクラシック序盤はステップレースも雨続き。
ようやくダービーも好天に恵まれたと思いきや、午後から突然の降雨で馬場が湿っていた。
完全に運に見放された事もあって、人気も下げていた訳だ。

逆にガステリアにとってこの雨は有り難い。
得意のパワー勝負に持ち込める環境が整った訳だ。
そして澪の体調の方は若干の倦怠感はあるものの、いつもに比べれば良好だった。
いや、仮に体調が悪くてもダービーと言う舞台は特別だ。
ダービーで騎乗するだけでも他のレースとは重みが違う。
その上、今年は栄冠に最も近い位置にいるだけに体調どうこう言っている場合では無かった。

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