PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 292
 294
の最後へ

駆ける馬 294

イージーゴアは本来の戦術から切り替え先行策を選択。
これはデイリーが感じたケンタッキーダービーでの違和感の答えだった。
恐らく後方からならサンデーサイレンスに届かない・・・
イージーゴアに本来の戦術を捨てさせる程、サンデーサイレンスは強いと認めたと言う事なのだ。

そのサンデーサイレンスのスタートはまずまず。
いつも通りの先行策だが、その外側にはイージーゴアがいる。
多少意外な展開ではあったが、本能的に乗るエイミーは気にはしない。
それはそうとして自分のレースをするのみであった。

そんな2頭に対し、ノースウィンドは最後方。
イージーゴアが戦術を変えたのに対してノースウィンドは自分の戦術を固持。
前で勝負すると言う選択肢はクロエには無かった。
イージーゴアの脚力なら前で勝負できるのはある。
故に戦術変更もできた。
だが、ノースウィンドに関しては戦術変更できる程器用では無い。
それより後方からの戦術でいい部分を出していく方が結果は出るだろうし、この馬が本格的に良くなるにはまだ時間が必要だと言うのがウィッチ厩舎全体の認識だった。

レースが進むにつれ、イージーゴアとサンデーサイレンスのマッチレースの様相は強まっていく。
向こう正面で先行する馬を交わすと、そのまま馬体が合ったまま一気に上がっていき、見る見るうちにほかの馬たちを突き放していく。

これには後方で構えていたクロエも少々予想外だった。

イージーゴアとサンデーサイレンス、デイリーとエイミー、この2者はお互いに一歩も譲るつもりなどなかった。

そしてコーナーに入るとイージーゴアが先に先頭に立ち、外に持ち出したサンデーサイレンスが追いかける立場に。
ケンタッキーダービーとは逆の追いかける立場になったサンデーサイレンスだが、直線入り口では並びかけて馬体を併せた。

そのまま追い比べ。
イージーゴアが僅かに先頭。
サンデーサイレンスも必死でエイミーが追うが、血走った目で狂ったように首を振ると・・・
イージーゴアに噛みつこうとしたのだ。

ややエイミーが距離を取っていたから接触は無かったが、サンデーサイレンスは俺の前に出るなとばかりに何度もイージーゴアに噛みつこうとする。
そして驚くべき事に、噛みつこうとしながらも全力で追うイージーゴアと全く速度が変わらないのだ。
それどころか少しずつサンデーサイレンスの方が前に出ているぐらいだった。

これにはデイリーも驚くばかりだった。
イージーゴアは全力かつ限界までの脚を使っている。
それに対してサンデーサイレンスはまともに走っていない。
認めたく無かったが、絶対的な能力においてイージーゴアが劣っていると言う事実を突きつけられているのだ。

それでも2頭のマッチレースは続く。
お互いに使っている力と残っている力は違えど、今のイージーゴアとサンデーサイレンスはほぼ互角だった。
2頭は馬体を併せ……いや、ぶつかり合いながら直線に入っても激しい追い比べは続いた。

その間にノースウィンドもポジションを押し上げ、マッチレースの2頭からは離れているものの3番手まで上がっていた。

しかし、その距離はまだ遠かったのだ。

必死で追うイージーゴアと噛みつこうと並走するサンデーサイレンス。
やがてサンデーサイレンスが噛みつこうするのを止めた。
何故なら・・・
イージーゴアより先行したからである。

デイリーは必死に追い続けている。
イージーゴアもそれに応えて速度を維持している。
だが、余りにも残酷な現実・・・
真っ直ぐ走っていないサンデーサイレンスの方が速度で上回っていたのだ。

そのままサンデーサイレンスが先頭でゴール。
大熱狂のピムリコ。
しかしデイリーは唇を噛み締める。
ケンタッキーダービー以上の完敗だった。
残酷なまでに示された絶対的な差・・・
良血馬に良血馬を掛け合わせた配合。
ただ良血馬を掛け合わせただけでなく、血統背景も素晴らしく、黄金の美しい馬体は均整の取れた芸術品。
それが・・・
無名の零細血統の不恰好な馬に負ける。
競馬と言うのはそう言うものだとしても、余りに残酷な結果だった。

逆に言うとエイミーからすれば、醜いアヒルの子が白鳥になった瞬間だった。
この勝利はケンタッキーダービーより大きいかもしれない。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す