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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 293

半持ちとはいえ日本人オーナーが関わったサラブレッドが「スポーツで最も偉大な2分間」と呼ばれるアメリカ最大のレースを勝った事を日本のメディアはかなり大きく報じていたほどだ。

「父から日本でスタッドインできないものか、とすぐに話が来ましたよ」
と樹里に話してきたのは吉野善太の息子・照樹だ。
高齢の父に代わりケンタッキーダービーを現地で観戦していたのだ。

「そうやって言ってくれるのは日本人だけなのよ本当に・・・」

ため息混じりのクリス。
彼女の言動から相当サンデーサイレンスのポテンシャルを買っているのが分かるだけに、母国で需要が無い事が寂しいのだろう。

「まあでも・・・いずれサンディの血をアメリカに帰してくれればいいわ」
「そうね・・・そうできるといいわ」

これまで実績ある海外種牡馬が日本に渡ってきたが、その全てが成功した訳では無い。
サンデーサイレンスもどうなるかは未知数なのだ。



そんなケンタッキーダービーから2週間。
日本ではヴィクトリアマイルでオータムリーヴスが快勝。
高松宮記念からのG1連勝で次は安田記念に挑む事になる。

そしてアメリカだが、アクシデントがあった。
サンデーサイレンスの右前脚が破行。
1週目に全く調教が出来ず棒に振る事になってしまったのだ。

更にピムリコ競馬場に先乗り調整しようと来た所・・・
多くの報道陣が馬房に殺到。
サンデーサイレンスに強烈なストレスを与える結果となってしまったのだ。

クリスとクレアは悩んだ結果サンデーサイレンスの馬房の扉を閉めて彼を「隔離」する措置を行った。
右前脚の状態はなんとか良くなったものの、サンデーサイレンスが調教を開始できたのはプリークネスステークスの本番4日前だった。

そんなこともあってなのかレースの1番人気はケンタッキーダービー2着のイージーゴアの方。
サンデーサイレンスは2番人気。

3番人気となったのはノースウィンド。
ケンタッキーダービーでのイージーゴアに迫った末脚が相当評価された事もあり、他に二強に並ぶ馬もいない事から上位人気に食い込んできた訳だ。

勿論、クロエは前回のように3着で終わる気は無い。
上がりの3ハロンのタイムではイージーゴアに及ばなかったものの、ロングスパートのイージーゴアに対して直線のみの勝負だったノースウィンド・・・
ラスト2ハロンのタイムなら上回っている。
短い距離ではあるが世代最強とも言えるイージーゴアの末脚より上回ったと言う事実は、クロエに大きな自信を与えていた。
長くは使えない末脚だが、使い所さえ間違わなければ二強に迫れると思っていた訳だ。

しかもサンデーサイレンスと違いピムリコでの調整は順調そのもの。
隔離されたサンデーサイレンスの代わりに詰めかける報道陣の前で愛想を振り撒くなど、精神的な強さも見せているぐらいだ。
芦毛の中ではかなり白い部類に入るノースウィンドの見た目が映える事から、サンデーサイレンスを取材出来ず苛立つ報道陣を落ち着かせるのにも一役買っていたりした。

ケンタッキーダービーは前日の雨が響いた馬場に悩まされた陣営も多かったが、ピムリコは好天に恵まれ良馬場。コンディションは最高。

出走頭数はケンタッキーダービーからぐっと減って9頭。
ローテーションの厳しさもあり三冠すべてに出走する馬は少ない。
その中でノースウィンドはすこぶる順調であり、サンデーサイレンスはなんとか態勢を整えることができた。

レースは完全にサンデーサイレンスとイージーゴアの一騎打ちの様相で進んでいく。

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