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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 292

スタートこそうまく出られたものの、馬群にいれようとしたところで他馬と接触しかけ、それで若干エキサイトした。
まあそれくらいはあってもおかしくはない…実際以前にも出くわした。

チャーチルダウンズは前日に雨が降り、馬場はかなり悪かった。
しかしサンデーサイレンスはそれも苦にすることはなかった。
エイミーはいい手ごたえを持って最後の直線までサンデーをエスコートすることができた。
勝負はここからだ。

直線に入りすぐに抜け出して先頭に立つ。
だがサンデーサイレンスは右へ左へとヨレながら真っ直ぐ走らない。
これこそがサンデーサイレンスの本領発揮な訳だが、そんな走り方にも関わらず、グングンと後続を突き放す。

一方、クロエもノースウィンドと共に仕掛ける。
先に仕掛けてロングスパートに入ったイージーゴアは随分と前。
次々と交わすと2番手に上がっていた。
かなり厳しい差だが、ノースウィンドの脚を考えるとこのタイミングまで待つしか無かった。

それでも仕掛けと同時にガツンと加速。
一瞬の加速でトップスピードに乗ると、前の馬を次々と交わしてイージーゴアの背中が見える。
そんな凄まじい加速にもクロエは厳しい顔で追い続ける。
直前の雨に湿ったコースで本来の加速を発揮できていないのだ。

それはイージーゴアと言えど同じだった。
真っ直ぐ走っていないサンデーサイレンスに近付きはしたが、それ以上の差が詰まらない。
サンデーサイレンスの走りを限界故の斜行と見ていたが、全く脚色の衰えが無い事に焦っていく。
その差は全く縮まらない・・・
ゴールを過ぎるまで、全く差は縮まらなかったのだ。

結局サンデーサイレンスは直線最後まで真っ直ぐ走ることはなかった。
それでも2着イージーゴアに差をつけての快勝。
ノースウィンドはそのイージーゴアに迫ったところがゴールの3着。

「凄かったよ、お姉ちゃんの」
「なんか勝った気がまるでしないわね」

ゴール後ノースウィンドをサンデーサイレンスに併せていくクロエ。
エイミーの方は勝ったのにも関わらず首を傾げていた。
レース道中は随分とエキサイトしていたサンデーサイレンスは、ノースウィンドが馬体を並べると多少はマシになって落ち着きだす。

そんなサンデーサイレンスにスタンドは大騒ぎだった。

まともに走らずに超良血イージーゴアに勝利する・・・
それはある意味事件だった。

イージーゴア関係者は口々に馬場状態に言及するが、主戦のパットン・デイリーはイージーゴアから降りるなり首を傾げる。

「どうしたパットン?それ程馬場が悪かったのか?」
「いや・・・そうなのだが・・・そうじゃない」

イージーゴアが思ったより伸びなかったのは事実だ。
だが、これまで乗ってきたイージーゴアの脚なら追いつける筈だった。
途中で失速した訳ではない。
サンデーサイレンスが全く失速しなかったと言うのもあるだろうが、デイリーの見る限りサンデーサイレンスは限界のように感じていた。

「理解はできないが・・・次で必ずやり返す」
「ああ、期待しているよパットン」

アメリカ三冠戦は過酷なローテーションだ。
次のプリークネスステークスは2週間後となる。


樹里としては棚ボタ的なケンタッキーダービー制覇・・・
先代から何度もクラシックを制してきた名門厩舎とは言え、クラシック制覇の祝勝会は大騒ぎになる。
無論、樹里も祝勝会の費用は惜しまない。

「恐らく・・・サンディの将来は余り明るく無いわ」
「えっ・・・ダービーを勝ったのに?」

顔色を変えずにバーボンをグイッと飲むクリスの言葉に樹里は少し驚く。
樹里の知る限り、ケンタッキーダービーの格式は低くは無い。

「かつてファーディナンドの時はダービー後に電話が鳴り止まなかったのよ・・・それが今回は全く無しなの」

勿論取材の電話はいくつかはある。
だが、彼女が言うのは将来を含めた買い取りの問い合わせだ。
つまり、種牡馬としてのサンデーサイレンスの価値はケンタッキーダービーを勝った所で全く上がっていない。
それどころか、この勝利はフロック的な扱いの報道すらある。

「そうなのかしら・・・私も吉野さんも、この馬は特別だと思ったのだけど」
「そう言うのは日本人だけね!今の所」

逆に負けたとは言えイージーゴアの馬産地での人気は揺るがないものだった。
それが血統の差と言うものだ。
日本でもオグリキャップの幼駒時代に中央から見向きもされなかったのと同じだろう。

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