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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 291

そう何時も通り・・・

世の中全てに怒り狂った瞳。
荒々しく逆立つ鬣。
耳を絞って口を大きく上下して歩く姿は、俺に触れるなと言わんばかり。
周囲の馬だけでなく観客までも威嚇する様に、口々にクレイジーと言う言葉が上がる程であった。

「やっぱりサンディは彼がいると大人しいわね」

ニコニコとしたクリス。
この舞台に慣れている歴戦の調教師だと言うのもあるが、彼女からすれば今日のサンデーサイレンスはこれでも大人しいのだ。
と言うのも横にピッタリとノースウィンドを付けているから、彼は不機嫌ななりにはご機嫌でもある訳だ。

そのノースウィンドはサンデーサイレンスが荒れてようが全く気にしていない。
兎に角手のかからないのはこの大舞台でも同じだった。
メンバー的にはやや苦しいのはあるが、サンデーサイレンスの精神安定剤的に登録した意味がある。
とは言え、主戦のクロエの方は一発狙ってはいた。

クロエは後方待機から直線勝負に賭ける。
直線の長いチャーチルダウンズなら可能な戦術だ。
恐らくイージーゴアも同じ作戦だろう。

サンデーサイレンスはポジション的に特にこだわりはないものの、気分屋ゆえにスタートをうまく出られるか気を揉む部分もあるとエイミーは言う。これまでのレースもうまくいかないこともあったがサンデー自身の力で勝ったレースもあり、彼女はどういうレースになっても馬を信じて乗ることにしている。

そのスタート。
蓋を開けてみればサンデーサイレンスは抜群の出だしで先行集団へ。
イージーゴアは後方グループで、ノースウィンドはそれをマークする形でレースを進める。

平坦なトラックコースで開催されるアメリカ競馬は、先行逃げ切りが有利である。
逆に言えば、後方待機の作戦は戦術的に不利であり、チャーチルダウンズのような直線の長い競馬場でなければ中々難しい訳だ。
それだけイージーゴア陣営は瞬発力に自信を持っているからこそ後方待機を選択した訳だが、すぐ後ろで様子を伺うクロエから見れば成る程と思う所はあった。

リラックスして走るイージーゴア。
後肢や臀部がしっかりとしており、血統だけでなく馬体も一流なのが見て取れる。
今までの殆どのレースを後方から捲って勝利してきた訳だが、まるで古馬のように発達した筋肉を見る限り、自信を持って後方待機を選んだのが良く分かる。

レースを見る限り、ノースウィンドと瞬発力はそう変わらないと見ている。
ただ一瞬で爆発的な瞬発力を発揮するノースウィンドは長く脚を使えない欠点もあった。
それに対して地力のあるイージーゴアはロングスパートが可能だ。
故に同じタイミングで仕掛けると先に脚を失うのはこちらになる。

それだけに前がどのくらい流れるかも重要になる。

サンデーサイレンスは道中気分よく走っているように見えた。
スタートもよく、エイミーとしては思い描いていたような位置取りで、今のところは折り合いに問題もなく走れている。
あとは持久力と脚の持続力があるイージーゴアに対して、先に抜け出してどこまでリードを保てるか。

とは言え、サンデーサイレンスはコントロールの利く馬ではない。
ただ所謂気分屋とは違い自分の意思で動いているだけだ。


何度も生死の境から復活したサンデーサイレンスは、不屈の精神力を持っている。
人の言う事を聞かないのも気性の荒さも、その不屈の精神力から来ているものだ。
そして、何よりも賢い。
レースと言うものを理解しており、勝ち負けと言う概念を持っているようだった。
故にゴールで他の馬より前に出なければならないと言う強い意思があり、そこに対する凄まじい闘争心を持っていた。
なのでエイミーはあれこれ指示しない。
彼のその気に任せる騎乗なのだ。

そもそも戦略的にあれこれ考えて乗る妹のクレアと違い、エイミーは感覚で乗る。
余りあれこれ考えて乗らないし、その時の直感でレースする。
そのせいか、サンデーサイレンスもエイミーに対しては比較的従順だ。
とは言え、彼女ですら振り落とされたり噛まれたりするのは日常茶飯事なのだが。

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