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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 289

走破タイムはコースレコード。
21年ぶりの地方競馬出身の馬による天皇賞の勝利。
さらに父が騎手人生で一度も勝てなかった天皇賞を、悠は騎手デビュー3年目、20歳の若さで制したのだ。

「完敗ね」

リトルウイングのタテガミを優しく撫でながら、澪はそう一言だけ口にして引き上げていった。



そして、祝勝会が終わったその夜・・・
澪と悠の再戦が行われていた。

「んいっ!ああっ!はげっ、激しすぎぃっ!!」

若干悲鳴混じりの澪をバックから力任せに突く悠。
性欲の強い彼だが、いきなりバックから激しく来る事は余り無い。
それはまるでレースでもねじ伏せた彼が、ベッドでも澪をねじ伏せようとしているようだった。

そんな悠に屈辱感で涙が出る澪だが、同時に幸福感も感じている。
不思議な感情だが、それがメスとしての本能だと理解はしていた。


結婚を決意し、関係各所に報告した時・・・
予想以上に祝福された事に驚いた澪だが、彼らの節々から見える感情を理解すると納得できる部分があった。
口には出さないが、皆競馬界の良血である悠の子供を自分に求めているからの祝福だと気付いた。
それは相当なプレッシャーでもあり、競馬サークル内での結婚が多いのも納得できてしまった。
外から嫁げば、そのプレッシャーは相当重荷だったのは間違い無い。

無論、澪は結婚を決意した時点で、悠の繁殖牝馬になる気でいた。
故に周囲の期待は受け入れれた。

と言うか、『この血を残さないと』と言う気持ちが相当に強かったからこその結婚だった。
ある意味ブラッドスポーツである競馬界にどっぷりと浸かったからこそ出てきた発想かもしれない。

なのでこう言う屈辱的な種付けセックスは悔しさと共に幸せでもあった。
以前なら孕みたいと言う感情が、これ程までに幸せだとは思いもしなかった。
昨年の香港で大きなお腹で幸せそうなシャロンや、たまに訪ねた涼風ファームの女達が大きなお腹で辛そうにしながらも幸せそうに働いているのを見て不思議だったが、今ならそれが理解できる。

本当に妊娠するなら騎乗馬に影響が出るから、先に樹里には相談した澪だったが、逆に樹里からは『バックアップするから沢山赤ちゃん産みなさい』と言われたぐらいである。
この樹里の言葉は直接言わない関係者のプレッシャーとは違い、澪の気持ちに気付いたからの言葉だった。
それが逆に有難い澪だった。

その相談された樹里も祐志の子供をもっと沢山欲しいのだが、彼女の立場での妊娠は影響が大き過ぎて出来ないのがもどかしい。
それ故に応援しているのもあった。


「若いっていいですよね」
「ふふっ、そうですねえ。そこまで歳が離れてるわけじゃないのに…なんか私たち余計に年寄りみたい」

涼風ファームを訪ねて報告に来た澪の姿を見て、樹里と真奈がそんなことを口にする。

「競馬って馬だけじゃなくて人にとってもブラッドスポーツですから」
「そうですよね」

放牧地の柵越しに幼駒ーウラカワミユキの88ーと戯れる娘たちの姿を見て、樹里は真奈とそんな言葉を交わした。

ウラカワミユキの88は受胎時にウラカワミユキが体調を崩し、一時預かりした経緯があった。
その後体調回復したウラカワミユキは渡良瀬牧場で出産。
元気な子馬で渡良瀬牧場ではやんちゃそのもの。
この縁で買い取る事になった関係で離乳時に涼風ファームに来たものの、内弁慶ぶりを発揮して虐められる側に回ってしまい渡良瀬牧場に返される羽目になっていた。
そこから冬を越して精神的にも成長した事で涼風ファームに来たものの、やはりここでは借りてきた猫のように大人しい様子だった。
ただ渡良瀬牧場で愛情一杯に育ったので、ややワガママなものの人懐っこい性格で安心して人間に触れ合えるのはある。

逆に人間と触れ合いにくいのは、レーシングジイーンの88だった。
兎に角先頭に立たないと気が済まない性格で、小柄な癖に人には徹底的に反抗する気の強さがあった。
ただ身体のバネの凄さはエリックも認める所で、手こずりながらもラルフとジョンが秋から始まる騎乗馴致に向けて準備をしていた。
そんな子なので娘達との交流はさせれない訳だ。

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