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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 287

雨でぬかるんだのと開催最終日の荒れ馬場が加味されたタフ過ぎるコースも難なく力強く駆けていく。
ドクタースパートもウィナーズサークルもタフな馬場を鞍上が一杯に追って伸びてくるが、差を僅かに詰めるのがやっとな状況だった。

ガステリアが1馬身ほど抜けてクラシック一冠めを制覇した。

まさしく『力』でねじ伏せた勝利。
雨と重馬場がガステリアに味方したのは間違い無い。
殆どの陣営が取材に重馬場に恨み節だった中、奥原だけがニコニコしていたのだ。

「全くもって、恵みの雨だったね」

彼自身も濡れていたが気にもならなかった。
勿論、同じく濡れネズミでガステリアと澪を迎えた愛美も満面の笑顔だったのだ。

これでまずは一冠目。
次は直行でダービーに出走する事になる。



皐月賞の次は、春の天皇賞。
ドバイ帰りのリトルウイングが2年連続の出走となる。

遠征帰りで馬体重は減っているが、調子は悪くは無い。
無論、究極のスタミナ勝負となる春の天皇賞においてマイナス要素ではあるものの、ここでも堂々の一番人気となるだけの実績はある。

2番人気はスルーオダイナだが、重賞勝ちあれどG1勝利は無い。
リトルウイング以外にG1勝利があるのが牝馬のミヤマポピーと言う状況なので、メンバー的には薄い感じであった。

その中で異色の経歴がイナリワンと言う馬だ。
東京王冠賞や東京大賞典を勝った地方競馬のエース格で、その実績を引っ提げて中央に殴り込みに来ていた。

ミルジョージ産駒の5歳牡馬。
この天皇賞が中央転入3戦目となる。
初戦のオープンは4着、続く阪神大賞典は5着。
少々人気を裏切る結果ではあったが、陣営は芝の走り自体は悪くなかったし差もなかったと言うことから自信を持ってここに送り込んできた。

今回の鞍上は舘悠である。

中央転厩後は児玉が騎乗していたが、生来の悪癖である折り合いの欠きにより惜敗。
ヒートアップして力は発揮できていないものの、芝の適性はあると管理する鈴鹿調教師は見ていた。
故にスーパークリークの戦線離脱で空いていた悠に騎乗依頼。
悠の勢いと癖馬への当たりの柔らかさを見込んでの事だった。

リトルウイングに乗る澪は、京都に先乗りして調整するイナリワンに騎乗した悠から話は聞いていた。
彼の興奮した言葉から相当な潜在能力がありそうなのは窺われた。
まあ、こう言う時は夜が激しくなるので何も言わなくても分かるのだが、それ故に気になる一頭であった。


そんなレースは、揃ったスタート直後にダイナカーペンターが飛び出しハナに立つ。
2番手は外からミホノカザン。
そこにミスターシクレノンとチュニカオーが続き、それに追随してリトルウイングが馬群の真ん中にいた。

人気のスルーオーダイナとランニングフリーはその後ろの中団。
イナリワンは後方集団の中に位置した。

最初こそ先行馬2頭が競り合う形でややペースが速くはなったが、徐々にそれが落ち着いて、最初のホームストレッチから1コーナー、2コーナーにかけては淡々とした流れになっていた。

これまでは折り合いに難を見せていたイナリワンだが、今回は道中エキサイトすることなく落ち着いてレースを運んでいる。

動きのなかったレースが一気に変貌するのは2周目の坂から。
2番手のミホノカザンの手ごたえが怪しくなるのを見ると、すぐ後ろにいたミスターシクレノンがじわりと並びかけ、そこにセンシュオーカンが接近。
さらにはイナリワンよりも後方にいたミヤマポピーがまくるように上がってきた。

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