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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 286

そんなレースは、マイネルムートが逃げ、ナルシスノワールが2番手。
一番人気のサクラホクトオーは戦術をガラリと変えて前からの競馬を選択。
人気上位のドクタースパートとアンシストリーは中団辺り。
その後ろにはオースミシャダイとウィナーズサークル。
ガステリアは最後方集団に位置し、内側にミスタートウジン、外側にエイシンハンターと言う位置取りだった。

馬場の状況は弥生賞の時と変わらず酷い。
走る度にバシャバシャと泥水が跳ねる。
特に内側は沼地のようにぬかるんでいる感じだ。
ガステリアは全く気にしないと言うか、むしろご機嫌と言う感じ。
愛美によると、そもそも雨が好きなようだと言う。
そんな所もあって、澪も乗っていて安心感があった。

泥を巻き上げながら走っていく馬群。
先頭から最後方までそれほど差は無い。
重馬場だけあってペースが遅いのも想定通りだった。

ペースが上がらなくても、後ろの位置取りでも直線ではしっかり届かせることができる。前走の経験から澪は自信を持ってレースを運んでいた。

最初の1000m通過が1分0秒9。
想定通りだ。

しかしそう思っていた矢先にレースが思わぬ方向に動く。
先行集団を走っていた1頭、アンカーが故障したのか急減速。
さらに好位にいたサクラホクトオーもズルズル馬群から後退していく。

逃げるマイネルムートを追いかけて、2番手集団にいたナルシスノワール、スピークリーズン、アイネスボンバーといったあたりは先頭を奪わんと一気に並びかけていく。

やはり泥田のような馬場だけに相当なパワーとスタミナが要求されている。
恐らく先行している馬も辛いのだろう。
既に後方噴射するサクラホクトオーは、先行馬から脱落して中盤から更に後方までズルズル下がって来ている。
一瞬故障かと思うような下がり方だったが、激しく手を動かす児玉を見ると馬が行く気を無くしているようにも見えた。
これは完全に雨と重馬場でやる気を無くしているようだった。

そんな中で比較的辛さの無いオースミシャダイとウィナーズサークルが少しずつ位置を上げていく。
澪もそれに追随してその後ろに位置していた。
序盤の最後方の位置から13、4番手程の所。
3コーナーに侵入する辺りでこの位置は悪くない。

そこから3コーナーを回り、外側から前に進出するガステリア。
外からオースミシャダイに並びかける位置まで上げた所で4コーナー。
馬群が広がっていく中で上手く真ん中辺りに潜り込んで直線を迎える。

直線に入ると、先行馬達はやはり限界。
後ろの馬がドッと捲り上げてくる。

追い上げてきた各馬は比較的コースの外めを回って4コーナーに突入する。

まず抜け出すのはオースミシャダイ。
先行勢で手ごたえの残っていたアイネスボンバーやドースクダイオーを交わし去っていく。
ガステリアはそれに追随して押し上げる。
ここで早くも先頭を奪う勢い。

そして大外からまくってきたのがドクタースパート。

中団から好位へと押し上げ、万全の位置からの仕掛け・・・
勝負師的家がここぞと言うタイミングで仕掛け、ドクタースパートが凄い脚で駆けてくる。
地方でデビューし、破竹の四連勝。
鳴り物入りで中央に移籍すると初戦で重賞制覇。
前走のスプリングステークスで初黒星となったが、その潜在能力は的家も惚れ込む程だった。

その後ろには、ドクタースパートに負けない豪脚を見せる芦毛の馬。
ウィナーズサークルが上がってきた。
中央競馬では数少ない茨城県産の芦毛馬は、管理する松沢調教師が配合から関わっていた。
ミスターシービーを三冠馬に導いた名伯楽が考え、爆発力を秘めるシーホークを組み合わせて産まれたのがウィナーズサークルだった。

この馬をクラシックを狙える大器として、シンボリルドルフを参考にローテを組んだものの、2歳時は惜敗続き・・・
ダートで2勝してギリギリでクラシックに滑り込んでいたが、松沢も主戦の郷家も勝負できると信じての参戦だった。

だが、その2頭より前を行くガステリアの脚は止まらない。
先頭に立つと凄まじいパワーで荒れた坂を駆け上がり、少しずつ差を広げていく。

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