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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 284

だが迷っている暇はない。
澪は思い切る。
3コーナーから徐々に前に進出。
4コーナーで先頭に並びかけて直線を迎える。

目一杯追って馬群から抜け出す。
直線は決して短くないが押し切れる能力がリトルウイングにはあると信じている。
その澪が信じる通りグングンと後続を引き離す。

ペイザバトラーはそれに付いて行けない。
戦術ミスなのか、元々の能力なのか分からないが、明らかにリトルウイングに追いつく脚ではない。
完全に一杯になっているペイザバトラーに対し、後方集団の馬の脚は鋭い。
後方から猛然と追い込んでくるボーンクラッシャーとキャロルハウス。
2頭は凄まじい追い上げで次々と前に向かっていく。

だが、リトルウイングのスピードも衰えていない。
直線半ばでまだ5馬身のリードがあった。

直線は目一杯追い通し。
今までのどのレースよりも体力の限界まで使って澪は必死に追って追って、リトルウイングを鼓舞した。
並んで追いかけてくるキャロルハウスとボーンクラッシャーだったが、後者の方はリトルウイングに追いつく前に先に脚が上がってしまう。

粘り込もうとするリトルウイング、追うキャロルハウス。
2頭の差は次第に詰まってくる。
澪の騎手人生の中で一番長く感じた直線だった。

押し切れた、と思ったところでキャロルハウスが馬体を併せた。
その瞬間に2頭がゴールを駆け抜ける。

僅かにリトルウイングが前。
これで海外G1を2勝目。
タマモクロスやオグリキャップに敗れはしたが、この馬も日本を代表する名馬であると証明するような勝利だったのだ。



一方、日本では高松宮記念でウイニングスマイルとの叩き合いを制したオータムリーヴスが勝利。
この後はヴィクトリアマイル、安田記念に向かう。

そんな春を迎えつつある北海道はまだ寒さが残っている。
涼風ファームの繁殖牝馬達も出産シーズンの半ばを迎え、次々と期待の子馬が誕生していた。

初出産で期待されていたシャダイソフィアもスターライトブルーの牝馬を産み、母子共に健康そのもの。
青鹿毛の父親そっくりの馬で、出産して一時間弱で立ち上がるぐらいしっかりした脚の持ち主だった。
それだけでなく日を追うごとに活発な様子で、早くも競走馬として期待したくなるような様子だった。

そのシャダイソフィア以外にもフルダブルガーベラも同じく初出産。
こちらは芝適性などを考慮してリードワンダーを種付けされて産まれたのは牡馬。

リードワンダーはきさらぎ賞を勝ち、当時のクラシック最有力候補と目されていたものの骨折で出走は叶わず、のちに復帰こそしたものの結果は振るわず引退。
重賞はその1勝だけだが内国産種牡馬のエースであったアローエクスプレスの仔と言うことからシンジケートが組まれスタッドイン。
すでにサンキンハヤテ、シヨノロマンを輩出して実績も十分。

ガーベラの実績を考えれば、もう少し上位の種牡馬も考えられるが、癇性のきついガーベラだけに初めての相手は落ち着いて種付け上手なリードワンダーで慣れると言う意味合いのマッチングだった。
母になって少し落ち着きが出た感じのガーベラだから、今季は本命であるミスターシービーかサクラユタカオーをエリックは考えているようだ。


そんな中、体調が上向き馬体の戻ってきたサクラスターオーがトレーニングを始めていた。
無論、競走馬としての復帰ではない。

種牡馬としてやっていけるか訓練する為に、疑牝台と言う牝を模した台で行うのだが、スターオーは興味を示さないでいた。
それどころか勃起しないので、精液の採取もできずヘンリーを悩ませていた。

「あれだけ体力を削られた影響だろうかな・・・」
「体力だけでなく精神力も削られたのだろう・・・」

頭を抱えるヘンリーにエリックもどうするか思案しながら言う。
獣医と学者であれ、彼らにもサラブレッドの生態の中でまだ分からぬ事も多いのだ。

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