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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 283

脚が上がったイブンベイを捉えるナスルエルアラブ。
それに並ぶ間もなく交わし先頭を奪ったプラニフォリア。
半馬身出たところでゴール。
いつもはクールな的家も一瞬だけ右手を突き上げた。

「直線に入ったところでは最高の手ごたえで、彼女の成長を実感しましたよ」

普段のクールな佇まいとは打って変わって興奮気味の的家。
それだけこの勝利が嬉しかったのだろう。
奥原としても、あえてここに遠征してきただけに、プラニフォリアがゴールを過ぎた辺りで大きくガッツポーズしていたぐらいだ。


プラニフォリアの勝利で意気の上がる奥原厩舎のスタッフに触発されて、仁藤厩舎のスタッフも気持ちが入る。
次はリトルウイングだ。

その出走するドバイシーマクラシック。
本命はバーデン大賞勝ちのキャロルハウスとジャパンカップを制したペイザバトラー。
それ以外にもジャパンカップ出走メンバーのマイビックボーイとボーンクラッシャーの騸馬2頭。
重賞勝ちのある素質馬アサティス等、メンバーはなかなかと行った所。

澪はドバイは何度も来ているとあって、随分と慣れてきていた。
澪だけでなく、仁藤厩舎も遠征慣れしてきただけに不安も少ない。
それに知ってる馬も多いとあって以前の何の情報も無く手探りと言う環境と比べるとやり易さはある。

昨年暮れに香港ヴァーズを制して、リトルウイング自身もさらにひと皮剥けたと言っていいくらい、澪は馬の成長も感じていた。
メンバーレベルは上がった印象だが、ここでも十分やれる。

レースは地元馬の先行で幕を開ける。
リトルウイングはスタートが良過ぎたくらいで、好位の外め4、5番手あたり。その背後にペイザバトラーがいる。
オグリキャップで勝てなかった相手だけに少々意識する部分はある。

もっとペイザバトラーは後ろから行くイメージがあったが、もしかするとこれが本来の姿かもしれない。
しかも乗るのが名手マッケンジーとあって、澪の警戒心は半端無い。

リトルウイングの内側にはマイビックボーイ。
この馬の巨体でオグリキャップが内に押し込まれて自分の走りができなかった記憶がある。

本命と言われるキャロルハウスはボーンクラッシャーと共に後方集団。
特にキャロルハウスは相当に末脚に自信があるようで、陣営からも戦前から後方待機の戦術を取るとの発言があったぐらいだ。

地元馬が引っ張るペースはやや速い。
キャロルハウス陣営が自信を持っているのもその情報があったのかもしれない。
リトルウイングにとっては良いとは言えないが、このペースでも問題なくできる自信が澪にはあった。

ドバイの馬場は常にグットコンディションと言うか、莫大な資金で維持されている。
そもそも競馬の創成期からアラブが大きな影響があったが、オイルマネーによって近年は更に影響力を高めている。
その潤沢な資金を使って維持されている砂漠の競馬場は、いつ乗っても素晴らしいコンディションだった。

アラブの王族は自国の競馬を盛り上げるだけではなく、自らも馬主として競走馬を所有して走らせている。
アメリカや欧州にも彼らの拠点があると言う話だし、最近では北海道の馬産地にも興味を示していると樹里は祐志から聞いたことがある。


地元先行勢のすぐ後ろにつけるリトルウイング。
ここからどこで抜け出すかが鍵になる。
後続の強豪たちのことを考えると判断が難しい。

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