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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 281

雄大な馬体から繰り出される力強く鋭い末脚に、マスコミは「F1マシンのようなスピードを持つ重戦車」と形容する。

ここでの最大のライバルは3戦3勝、無敗の2歳王者サクラホクトオー。
この馬がオッズでは飛び抜けていて、ガステリアはそこから離された2番人気。
共同通信杯2着のレインボーアンバーが僅かの差で3番人気。

その上位3頭に人気は集中している感があった。


ガステリアに騎乗した澪が本馬場に出る。
降りしきる雨の中、踏み荒らされた馬場は田んぼのような感触。
そんな馬場でもガステリアの返し馬は力強くスムーズだった。
奥原から重馬場に強いとは聞いていたが、これは思ったよりスムーズに走って驚くぐらいだった。

ただ雨もあって少し肌寒い。
このレースの為だけに遠征している澪と違い、数多く乗ってる騎手達は疲労の色も見える。
そして馬達も雨と肌寒さにやる気が削がれているのもいた。


そんなレースは雨降る中スタート。
ダブルスチールが逃げ、レインボーアンバーが続く。
一番人気サクラホクトオーは後方。
更にそれを見るようにガステリアが後ろに控えていた。

この重馬場だと前の馬は止まるだろうと澪は見ていた。
ただレインボーアンバーは重馬場得意そうなので、余り離され過ぎるのも良く無い。
前半は我慢しつつ、どの辺りで前に出るかを伺いながら前半は推移した。

ダブルスチールは1頭だけ少々飛ばし気味の逃げを打っているが、馬場の影響もあってそこまでタイムが速くならない。
2番手追走のレインボーアンバーはダートで2勝を挙げていることもあってかこの不良馬場も特に気にすることなく走れている。

逆にこの馬場にもがいていたのがサクラホクトオー。
勝負どころから児玉が手綱を扱いていくが、まったく前に進んでいく気配がない。
それを見ながらチャンスと思った澪は外めからガステリアを動かしていく。
その後ろには同じように動きを開始するアンシストリーとロマネコンティ。
とりわけロマネコンティの方はロングスパートとも言えるくらいスイスイと動いていくが……これが4コーナーを曲がりきれずに大逸走。

コーナー付近は重馬場でもいつも以上にコンディションが悪く、まともに走れない馬もいるぐらいだった。

そんな中、スイスイと走っていくレインボーアンバーは、先頭を交わして直線入り口で先頭に立った。
この最悪の重馬場でも何のその。
全く影響無く馬群を引き離しにかかる。

それに対して澪とガステリア。
最終コーナーで後方のままだったが、ポッカリと空いたインに馬を入り込ませる。
普段以上に開いた内側は何も遮る者はいないが、ここは湿地のような有様。
走る度にバシャバシャと普段とは違う水音がしているぐらいだ。
その殆どの馬が避けた内側。
後方から進出したガステリアは最終コーナーから直線に入るまでで10頭近くをごぼう抜き。
直後に入った所では前から3番手にまで上がっていた。

馬場適性とパワーがなければ出来なかった芸当。
パワー全開で中山の川のようになった坂を登っていく。
グングンと遥か前にいたレインボーアンバーの背中が迫ってくるぐらい、パワフルな走りは最低の重馬場も問題にしなかったのだ。

しかしレインボーアンバーも道悪巧者にして実力馬。
ゴール前ではあと一歩まで迫るもそこからまたひと伸びしてガステリアの追撃をしのぎ切る。
ガステリアは僅かに届かずの2着。
この結果でも奥原は満足だった。

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