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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 280

パーソロンの後継種牡馬としてはシンボリルドルフもおり、現役時代の実績や人気はルドルフのほうが圧倒的に高い。
しかしそれゆえに種付け権の争奪戦も過熱しており、同じ父を持つスターライトブルーはルドルフより種付け料が安いことからも日高や静内、新冠などの中小の牧場からは「ルドルフには手が出ないが、スターライトブルーもいい馬だ」という声が上がっていて、馬産地人気は高かった。


吉野はアメリカ滞在時に1頭の繁殖牝馬を購入した。
ノーザンダンサー産駒のアンティックヴァリューという牝馬で、すぐに北海道に送ると吉野がこれも社来でスタッドインさせたトニービンを種付けしている。

トニービンはアイルランド生まれ。
安価でイタリア人実業家に買われ、2歳3歳時はG1で善戦するだけの馬だったが、4歳になり開花。
エリントン賞で重賞初制覇を皮切りに、共和国大統領賞、ミラノ大賞典とG1を連覇。
そこからフランスやイギリスに遠征すると、サンクルー大賞典、凱旋門賞で2着と好走。
イタリアの一強豪馬から欧州のトップレベルへと駆け上ったのだ。

凱旋門賞後にイタリアに戻り、ジョッキークラブ大賞典に勝ち、翌年は共和国大統領賞、ミラノ大賞典を連覇。
そして2度目の凱旋門賞挑戦で栄冠を勝ち取り、最後はジャパンカップで引退していた。
この超一流の名馬を吉野は買い取っており、ノーザンテーストに次ぐ主力種牡馬として期待していたのだ。
ジャパンカップでも怪我もありながら5着と日本の適応性があるような感じで、馬産地でも評判は良いようだった。

樹里もそんなトニービンの相手を探す吉野の共に馬産地巡りをしたが、色々知見を得れる訪問だった。
そしてそうしているうちにレースの開催日が迫ってきていたのだ。

3月の初め。
サンデーサイレンスが一般競争で今年最初のレース。
休養を挟んだ事と成長で逞しさを増したサンデーサイレンスは、全く危なげなく快勝。
しかも余力残しでの快勝だった。
余力残しであった為、日を置かずサンフェリペステークスに登録。
その日にはノースウィンドも出走する。

そのノースウィンドも一般競争で勝利。
サンデーサイレンスはレースで出遅れながらも勝ってみせる。
これにより、2頭共に次走はサンタアニタダービーに出走する事になったのだ。

2頭の勝利に開かれた祝勝会でサンデーサイレンス主戦のエイミーが言う。

「この強さならケンタッキーダービーが見えるわ!」
「こらこら、まだ早いわよ」

興奮気味の妹をクレアが嗜めるが、彼女も嬉しそうではあった。

「ノースウィンドも素質は負けてないと思うけどね」
「あの子は真面目過ぎる所が抜けてくればいい勝負になると思うけどね」

ノースウィンドの主戦のクロエもそう言うが、クリスからすれば本格化はまだまだだと思っていた。

「自分との闘いが一番だけど、それ以上に強い相手がこの先待ち受けてるんだからね」
「イージーゴアね」

世代トップの力を持つと言われるアリダー産駒は2歳シーズンにすでにG Tを2勝。
ブリーダーズカップジュヴェナイルはイズイットトゥルーに敗れたものの、今季初戦では圧勝。
ケンタッキーダービーでも主役になるのはこの馬だと言われていた。

母系は数多くの活躍馬を輩出する良血。
その美しい馬体から『黄金の貴公子』と呼ばれる程だ。
まだ前哨戦が始まる前からクラシック最有力と言われるのも、その綺羅星の如くの良血と美しい馬体故だろう。

そんな中でもクリスはエイミーはサンデーサイレンスに自信を深めているようだった。
それだけでなく日本随一の相馬眼を持つ吉野も、この馬の底知れぬ能力に惚れ込んでいる様子だった。
そんな事もあり、樹里は期待を抱きつつ帰国したのだった。



樹里の帰国前に行われた阪急杯はオータムリーヴスが快勝。
短距離でも適性を示せた事で高松宮記念に弾みがついた。

そして帰国して直後に開催された弥生賞。
当日はあいにくの悪天候で重馬場。
だが、奥原はニンマリと笑っていた。

「この天気は幸先良いね」

パワー型のガステリアにとって重馬場は好都合。
跳びが大きい馬は重馬場苦手な傾向があるが、ガステリアの場合はそもそもが大型馬なのと、掻き込む力が強いタイプなのでむしろ強みになっている。

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