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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 29

繁殖牝馬の個性というか、毎年のようにコンスタントに受胎してくれる仔だしのいい馬がいればその反面なかなかうまくいかない馬もいる。

中には唯一生まれてきた馬から名馬が誕生し血を繋いだ幸運な例もあるが、生産者としては不受胎という言葉はできれば聞きたくないものである。

「シービークインはトウショウボーイに恋したなんて話も聞きますね」
「それはそれでロマンチックですけどねぇ」

そんなロマンチックな話だけでなく、そもそもがこの2頭は結ばれる事が無いと言われていたのだ。
何故ならシービークインの牧場はトウショウボーイの種付け権の資格に該当しなく、本来なら種付けできないのだった。
だが、当時は人気の薄かったトウショウボーイを売り出す為に優秀な繁殖牝馬の相手が欲しいスタリオン側と、種付けしたい牧場側の利害が一致しこの交配が行われたと真奈も聞いた。
そんな思惑も含めて名馬が出来た事に競馬の面白さがあるのだろう。


そして、菊花賞の興奮冷めやらぬ中、週末がやってくる。
まずは関西で行われたスワンステークスはニホンピロウィナーが圧勝劇。
ハッピープログレスが2着と完全に世代交代を印象付ける。

そして天皇賞、秋・・・
前走毎日王冠で久々復帰のミスターシービーは、カツラギエースに届かず2着。
だが、今回は衝撃の結果だった。

府中をどよめかす衝撃の末脚・・・
破天荒な上がりタイムに東京競馬場がどよめいたのだ。
それは三冠馬の鮮やかな復活劇だった。

レース後ミスターシービー陣営は次走ジャパンカップ出走を明言。
シンボリルドルフも出走を予定しており、2頭の3冠馬の直接対決でメディアもファンも盛り上がりを見せた。

加えて、誰もが思うことは、この2頭ならどちらかが施行以来日本馬が勝てていないジャパンカップで海外の強豪を打ち負かしてくれるのではないか…という期待を持っていた。

その夢の対決を前に、装い新たになったエリザベス女王杯はロンググレイスが先輩牝馬の意地を見せる快勝。
マイルCSはニホンピロウイナーがシャダイソフィアの追撃を退け秋の短距離界を見事に制圧してみせた。

そして、デイリー杯2歳ステークスのスターライトブルーだ。
鞍上は澪は変わらず。
ただその澪は菊花賞の週から勝てていない。

新人騎手であるから常に勝てる馬に乗れている訳では無い。
だが、失速なのは確かだ。
あの敗戦のショックからは立ち直ったものの、まだ心と身体のバランスが取れないでいた。

パドックで号令がかかり、澪がスターライトブルーに跨る。
じんわりと濡れる股間・・・
そしてスターライトブルーの時は特にそこに疼きが加わるのだ。

ふうと変な吐息が漏れる。
慣れてきて顔には出なくなってきたものの、感覚は慣れていない。
肌寒い季節なのに汗がじんわりとしてくる。

そんな澪に対して、スターライトブルーはご機嫌だ。
足取りも軽い。
と言うか、あれ以来何度か馬っ気を出したスターライトブルーの処理を寛子としていた澪だが、そこからスターライトブルーは澪を背に乗せるとご機嫌になる。
ただ言う事は余り聞かず我儘なのだが、澪に心を許してくれてる感がある。

これを寛子は『ブーちゃんが澪ちゃんを自分の女だって思ったから』なんて言ってるが、あながち外れではない気がしていた。

レースは11頭立て。
うち牝馬が8頭というメンバー構成だが、スターライトブルーは不思議なことに牝馬に興奮して馬ッ気を出すようなことはない。

「澪ちゃん以上の女はいないってことじゃないかな」

寛子はパドックでそんなことを言って笑っていた。

デビューから連勝中のスターライトブルーは重賞でも堂々単勝1番人気。
同じく連勝中の快速牝馬2頭―二ホンピロビッキーとダイナシュペール―がそれに続いている。

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