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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 279

気の悪さを出しても勝ち馬とは僅差の2着。
気分良く走ってくれたら大差の圧勝。
その日にならないとご機嫌が良いのか悪いのかわからない部分にエイミーたちも手を焼いているところはあるが、ポテンシャルの高さは誰もが認めているのだ。

現時点では短い距離でしか走れていないが、いずれは王道路線の9〜10ハロンもこなせるというのがクリスの見方だった。

「でもねぇ・・・」

馬房の前で訪れた樹里にクリスが苦笑する。

「本当に手の焼ける暴君なのよ」

それは樹里も何度も来て理解していた。
毎回来る度に猛獣のような声で威嚇されているし、不用意に近付いた時に噛まれそうになった事もあった。
父のヘイローも気性が荒すぎて肉食獣と言われたが、サンデーサイレンスもそれを彷彿とさせる気性の荒さだ。

ただこれでもマシになったらしい。
特に隣の馬房のノースウィンドが居るとご機嫌な事が多い。
人だけでなく馬にもキツいサンデーサイレンスは馬に対しても当然当たりが強い。
ノースウィンドに対しても最初は当たり散らしていたものの、おっとりとしてマイペースなノースウィンドは我関せずと言った態度で、そのうちサンデーサイレンスも諦めたのか認めたのか・・・
逆に仲良くなったのである。
そのお陰で人に対する暴君ぶりも少しマシになっていた。

「だから随分とレースに集中できるようになったわ」
「じゃあ楽しみよね」

始動戦は3月のサンタアニタ。
まず6.5ハロンの一般競走を使って、その結果次第で距離を延ばしたり重賞に使っていくことを考えるとクリスは樹里に告げる。

今回樹里はサンデーとノースウィンドのレースを観戦するまでの滞在を予定していて、その間はウィッチ家に招待されている。
クリスの運転する車の中で、樹里はサンデーのこれまでに関する数奇なエピソードを数々を聞かされた。

その中でも特筆すべきだったのが、1歳時のセリで見栄えが悪いからと買い手がつかなかったのと、そのセリの帰り道で起きた馬運車の横転事故に巻き込まれた話だった。

横転事故で唯一、重症を負いながらも生きており、その後の治療もあって競走馬となれた。
ただ主治医によると、生きれたのはこの馬が持つ卓抜した精神力故と言う事だ。

「ただ気性が荒いのじゃなく、強固な意志を持つから従順ではないと思ってるの」

暴君のような気の荒さは厄介だが、それだけの馬で無いとクリスは考えていた。
故に売れ残ったこの馬が生死の境を彷徨おうとも見捨てなかったのである。

「結局、売れ残っても厩舎に残そうと決めたのはそう言う事・・・まさかあなたが買ってくれるとは思わなかったけどね」

そう言うクリスに樹里はかなりの額を提示されたのだが、それを二つ返事で快諾。
それ故に本気であると見たクリスは自分の権利分を売ったのだ。
一応、残りの権利も買うつもりだった樹里だが、たまたまアメリカ視察中の社来軍団の総帥吉野がこの馬を見て気に入ったようで、今は吉野と折半する形での所有になっている。
いずれ吉野は社来ファームに種牡馬として導入を考えているようで結構な額を投じたらしく、生産牧場からは相当感謝されたようだ。

そんな風に樹里がアメリカ滞在している間に、リトルウイングが京都記念を快勝。
そしてプラニフォリアも中山記念を勝ち、それぞれ海外遠征前に良い形で調整できていた。

特にリトルウイングは現実でもアンバーシャダイやダイナガリバーに並ぶノーザンテースト産駒の代表になりそうだと言う事で、ここで海外の実績を加えれば後継産駒となれる期待があった。
故に吉野はアメリカに顔を出した時も、我が事のようにリトルウイングの活躍を喜んでいた。
特に姉にダイナカールがいるだけに、その子達の評価も上がっているから余計だ。

「ソフィアも順調だと聞いていますし、本当に今年は楽しみです」
「そうですね、私も楽しみにしています」

シャダイソフィアの初出産も控えているが、エリックによるとソフィアは元気そのものだと言う。
吉野にとっても愛着ある血統のシャダイソフィアだが、樹里にとってもスターライトブルーの子と言うので期待は大きい。
種牡馬になったスターライトブルーは期待は大きいものの、まだ評判になる子は出ていない。

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