PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 276
 278
の最後へ

駆ける馬 278

本気で追わずしてこの強さ。
合図に一発鞭を入れただけでこの勝ち方は、当然クラシックを意識せざるを得ない。
それだけに勝った事より無事に帰ってこれた事にホッとする。

「いい調整になったね、ありがとう」
「いえ・・・スケール感はラモーヌ以上ですよ」

労う奥原にそう答える。
若くして名馬に乗ってきた澪だが、この馬は本気で走ればラモーヌを超え、オグリキャップに迫るのではと思っていたのだ。

「ふふ・・・我々もそれぐらい期待しているさ。次も頼むよ」
「はいっ!」

奥原の中では次は王道・・・
弥生賞から皐月賞、そしてダービーへと続く道を思い描いていた。
その道をガステリアは本命として歩めるだろうと。



一方、年の明けた涼風ファーム。
かつてシャダイソフィアの為に作った温泉療養施設だが、ここに2頭馬が療養に来ていた。
それはスーパークリークとオグリキャップだった。
只の療養ではなく、スーパークリークは重度の筋肉痛、オグリキャップは捻挫の療養の為だった。
その為、2頭は春先の予定が白紙となっていた。

デビュー前から体質に関しては陣営がいろいろと気を使ってきたスーパークリークと、超弩級のタフさを誇り連戦にもへばるところを見せなかったオグリキャップ。
対照的な2頭だが、激戦を演じてきたツケが現れた格好となってしまった。

「先生は春は全休で秋に戻れるようにと言っていたわ」
「無理させて壊すのは一番嫌だからな」

クリークとオグリの様子を見に来た樹里と祐志はそう言いながら療養する2頭を見守るのだった。

そして2頭以外にもサクラスターオーが今だに療養中である。
馬体重も400kg程となり、体調も上向いてはいるものの、少しの事で体調を崩す事もありまだまだ万全とは言い難い。
だが、死の淵からは脱却したとエリックも自信を持って言えるまでとなっていた。

「春先には牧場を走り回れるようになっているだろうな」
「それは楽しみね」

とりあえず生きてくれれば良いというミッションはほぼ達成だろう。
そんな報告を聞き、樹里は安心して牧場を離れたのだった。



年明け、騎乗停止となった舘悠であったが、復帰後は猛烈な勢いで勝ち星を重ね、すぐにリーディングトップになっていた。
もうこの若き天才を止める者はおらず、有力馬主達や調教師達がこぞって悠に依頼してくる状況だった。

そんな中、澪はリーディングベストテンにも入っていない。
勝てないのではない。
騎乗数を絞っていたのだ。

その理由は2月上旬。
悠と澪の結婚発表が答えだった。
今年7月に2人は結婚・・・
澪の厩舎移籍や騎乗数制限はその為の準備だったのだ。

関係者には驚きはない。
むしろそうなって欲しいと言う空気はあった。
舘悠と言う騎手界のサラブレッドの血を、優秀な女性が繋げて欲しいと言う声は関係者に多くあったから、むしろ歓迎の声しか無かったのだ。

その当事者の澪は、香港遠征で決断していた。
もうこれはメスとしての本能で、このオスの種を孕みたいと言う思い・・・
まあ、見事に悠にオトされた訳だ。
なので関係者の祝福と喜びは、逆に困惑している所もあった。

「まあ、娘を嫁にやる気分だよ」

そう笑う仁藤はどこか嬉しそうであった。
悠の父親とも懇意で、幼い頃から知る少年が父親以上の才能を秘めてると知ってから悠を重用している仁藤だが、それが澪とくっ付いたのが結構嬉しい。
これが仁藤だけでなく他の関係者もこの件では頬が緩んでいるのだった。



そんな2月に入って、樹里の馬も次々と始動していく。
春全休予定のスーパークリークを除く国内4頭。
ガステリアは京成杯後も順調だが、あえて間隔を開けて弥生賞に向けて調整中。

オータムリーヴスは短距離路線。
阪急杯をスタートに高松宮記念、ヴィクトリアマイル、安田記念を予定。

そしてプラニフォリアとリトルウイングだが、ドバイへの挑戦を予定していた。
プラニフォリアが中山記念からスタートしてドバイターフ。
リトルウイングが京都記念スタートからドバイシーマクラシック。
どちらも香港の内容から海外でも勝負できると見ての決定だった。

そしてアメリカの2頭。
どちらも3月の一般競争からスタート。
そこで実力の最終見極めを行い、重賞挑戦のランクを決定すると言う事だ。
クリスはどちらも重賞級の実力があると見ているが、ノースウィンドの方は上位で戦うにはまだ少し時間が必要だと思っていた。
そしてサンデーサイレンスはと言うと、まともに走れば大物だと思っていたのだ。

ただ主戦のエイミーが言う所によると、これまで一度としてまともに走った事が無い。
気性の悪さがレースで悪い方向にしか出ていないと言う。
それでランクが低いレースとは言え好成績なのは恐るべき大物だと言えた。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す