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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 277

しかしオグリキャップも負けない。
迫ってくる相手がいるなら、むしろそれをエネルギーに変えるくらいの根性を見せ、スーパークリークに並ぶ隙を与えなかった。
馬場の外をタマモクロスとサッカーボーイが伸びてくるが、タマモクロスがスーパークリークを交わすのがやっと。
その半馬身前でオグリキャップは真っ先にゴールを駆け抜けた。

スーパークリークは3着、サッカーボーイは4着。

スーパークリーク鞍上の悠は直線で馬群を捌く際にメジロデュレンの進路をカットしたことで年始開催の騎乗停止処分を受けてしまうのだった。

プチソレイユは5着。
頂上決戦からは少し離される形となったが、ラストランも十分に持ち味を見せたと言ってよい競馬で、熊崎も松山もレース後は笑顔だった。

良い形で牧場に帰せると言うのが2人にとって最も嬉しい事だったのだ。



そして年が明けた。
年明けすぐに年号が代わり、平成と言う新しい時代が訪れる。
そんな年明けを迎えた栗東での事。
澪は仁藤厩舎から所属を濱松厩舎へと変更していた。

騎手の所属変更はそれなりにある事だ。
特に仁藤と寛子が師弟関係であるし、寛子と澪の関係も深い。
それだけに関係者は驚く事も無かった。

そんな心機一転のスタートの澪。
新年早々、ガステリアとのコンビで京成杯に出走する事になった。


札幌2歳ステークス以来の出走である。
レース後に少し脚を痛めて一旦牧場に帰り、晩秋に帰厩。
そこから調整して調子が上がってきた事で、奥原は一度使ってみようと思った訳だ。

京成杯は重賞であるが、まだ寒い時期だけあって有力馬は少ない。
能力的に見れば勝てて当然なレースではあるが、奥原はクラシックに向けた調整と捉えていた。

脚部不安による休み明けとはいえ実績では断然なのでやや抜けた1番人気に推される。
勝って当然の見方はされるがたとえ負けても無事回ってくれば良い。

中山芝2000mは皐月賞と同じ条件。
クラシックを目指す上でこのコースを走っておくのもいい調整になる。

11頭と少ない出走頭数ながら、先行した2頭がやり合ってややハイペースでレースは進む。
澪はガステリアの気に任せてゆったりと後方から行く。

大型馬は大きなストライドが武器となるが、それは逆に欠点ともなる。
シロノライデンがそうだったが、ゆったりと追走してゆっくり加速させてやる方が真価を発揮するのだ。
逆に忙しい展開は向かない。

ただガステリアは父のグリーングラスがそうだったように、コーナーリングは巧みな方である。
それは筋骨隆々のマッチョ体型でありながら柔軟性にも富んでいるからだ。
グリーングラスはこの特性を産駒に伝え易いが、同時に大型馬にありがちな体質や脚元の弱さも遺伝させてしまう。
ガステリア自身もやはり脚元は強いとは言えない。

そんな馬だけに無理は禁物だ。
それもあって澪はゆったり走らせる事に徹する。
コーナーをゆっくり回り直線へ。
ほぼ最後尾だが馬群は団子状態。
澪はガステリアを大外に出して追い出す。

ややトップスピードまで乗るのにタイムラグがあるから、遅れてドンと来る加速。
ただその加速が暴力的なのだ。
屈強な筋力で中山の坂すら無いかと言う勢いで駆け上がっていく。

先行した2頭が垂れて後退していき、その代わりに先頭争いする馬たちも後方から進めてきた馬たち。
スピークリーズン、ミョウジントップ、マイネルブレーブ…これらを一気にまとめて交わし去る。

2着争いは5頭が絡む大激戦になったが、ガステリアはそれを2馬身半も突き放す快勝劇であった。

この勝利も澪にとっては当然のようなもの。
力強い走りを見せてもなおケロッとしているガステリアの鬣を優しく撫でながら装鞍所に引き上げていく。

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