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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 276

連戦で疲れの見えるオグリキャップだが、気合いの方はそれに反比例して乗りに乗っている。
その上、どこかスッキリと迷いの無い表情の澪。
リーディング首位の悠からは勝ち星も離され、関東の名手岡江に次ぐ3位に落ちたが、香港から帰って迷いが消えたのかこの週の騎乗は好調時の姿に戻っていた。

瀬戸内には『原点に戻ります』と、オグリキャップの戦術にも迷いが無い言葉。
その澪を見て、瀬戸内も今度こそはタマモクロスに勝てると確信めいた思いになるぐらいだった。

だが、そのタマモクロスも連戦の疲れはあるだろうが、怖いぐらいの仕上がりになっていたのだ。
南も『このまま勝ち逃げする』と自信を持って言えるぐらいの好調さだった。

そんな二強が相対している横で、その2頭を喰うつもりの男がいた。
舘悠である。

『ここの主役はクリークですよ』
そう言ってのける悠だが、そう言う通りスーパークリークの調子も良い。
脚のコンディションも良く、これなら本気で追える・・・
そして追えばタマモクロスにもオグリキャップにも負けないと自負していた。

1番人気はタマモクロス、次いでオグリキャップ。
3番人気はサッカーボーイでスーパークリークはその後。
上位人気の構図は中長距離の絶対王者に勢いのある3歳牡馬が挑む、という形。

そしてこのグランプリではプチソレイユもラストランを迎える。
上位とは離された穴馬という位置付けだが、状態は生涯最高とも呼べる出来だと松山が自信を持って送り出す。

熊崎も『この状態まで仕上げて貰ったのだから皆んなを驚かせますよ』と手応えを感じての出走だった。


そんなレースは予想通りレジェンドテイオーとプチソレイユの先行争いから始まる。
少し強引にでもハナを切りたいレジェンドテイオーに対し、馬体を併せながら無理には追わず、さりとて離れないプチソレイユ。
郷家に楽に逃がさない辺り、熊崎の度胸と成長を感じさせる騎乗だった。

オグリキャップは中団のやや前。
想定より前ではあるが、澪としてはベストと思っている位置。
そこまでペースが早くならないと見ての位置取りだった。

そのオグリキャップをピッタリマークするのはスーパークリーク。
手応えの良さに悠の頬が少し緩む。

逆にタマモクロスとサッカーボーイはスムーズにゲートから出れなかった。
特にサッカーボーイはヒートアップしてしまい、ゲートに頭からぶつかり流血。
姉のウィンドサッシュと走ったマイルチャンピオンシップとは違い、抑えきれない程に昂ってしまっていたのだ。

タマモクロスは有馬記念に向けた調整の為ひと月ほど前から美浦トレセンに入っていたのだが、その美浦の水が合わずカイバ喰いが落ちてしまうなどスタッフもかなり苦労していた。
これはオグリキャップも同じだったのだが、オグリの方は中山でのスクーリングの往復を行っても馬体がすぐに回復することに瀬戸内たちは驚くのだった。


レースは向こう正面を過ぎて3コーナーへ。
タマモクロスはここから追い上げを開始する。

神経質で何かあると体調にすぐ出るタマモクロスだが、今年から一気に成熟していた。
それでも疲労もあって久々にイライラしてスタートは失敗したものの、今現状で最良の出来で追い上げる脚にも力があった。

そんなサッカーボーイとタマモクロスが外から追い上げてくる中、オグリキャップは内側で動かずにいた。
きっちり折り合い、脚も溜めている。
澪は原点回帰・・・
他馬がどうではなく、自分とオグリキャップのレースをすると決意して乗っていた。

4コーナーでは追い上げるタマモクロスとオグリキャップが同じ位置にいた。
そのオグリキャップに澪がゴーサインを出したのは、直線に入ってからだった。

直線での瞬発力勝負。
対するは稲妻の脚と弾丸シュート。
だが、オグリキャップの繰り出す鬼脚はそれ以上だった。
瞬く間に先行馬を抜き去りトップに踊り出る。

だが、そこに待ったをかけたのは、オグリキャップの後ろで潜んでいたスーパークリーク。
猛然と加速しオグリキャップに迫ろうとする。

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