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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 275

次の香港スプリントはウィンドサッシュが鮮烈な差し切り勝利。
ラストランを見事に勝利で飾った。
色々感慨深い奥原は甥の堂々とした騎乗ぶりに込み上げてくるものがあったが、それを誤魔化しながらウイニングランから戻るウィンドサッシュを迎えた。

「良い形で牧場に帰せるな・・・ご苦労だったな」
「はいっ!先生っ、やりましたよ!」

込み上げたものを誤魔化しながら馬を労う奥原と、そんな奥原の気持ちに気づかない若い横平。
そんな様子を愛美はニヤニヤしながら見るのだった。


ラストランを飾ったウィンドサッシュに続き、来年はマイル路線で戦っていくオータムリーヴス。
寛子と悠の師弟コンビで挑む初めての海外レースが次の香港マイルだった。

海外は仁藤厩舎時代に経験しているものの緊張する寛子に対し、初海外の悠に緊張感は無い。
むしろ楽しんでいるようで、レース後の観光やグルメを話題にしているぐらいだ。

「本当に大物よねぇ」
「ふざけてるんじゃなくて、いつも通りだからねぇ」

そんな風に寛子と澪が言うが、感心半分呆れ半分である。
彼女達のオスはどこまでも大物なのであった。

シャロンもセシリーも悠を一目見て、即座にその「能力」を感じ取ったのか、澪に言ったことは全く同じで、

「彼はジョッキーとしても、オトコとしても最高よ」

だから簡単に手放してはダメよ、と言うのだ。
どういう事なんですかと澪は思うが、彼女たちの言葉も否定はできないのだった。

そんな悠も馬に跨ると顔つきは一変し、たちまち勝負師の表情になるのだ。

「彼女(オータムリーヴス)が一番いいパフォーマンスをしたのはマイルですから」

その言葉通り、レースはオータムリーヴスの完勝。
このレースは香港馬ばかりであったのも幸運だったと言える。
特に今年は欧米マイル路線でウォーニングやミエスクと言った世界的名馬が活躍していたので、それらがいなかったのは幸運と言えた。

これで樹里の所有馬は三連勝・・・
最後は香港カップでプラニフォリアが勝てば完全勝利となる。


そのプラニフォリア。
秋に入り惜しい所で惜敗続き。
それを最も忸怩たる思いでいるのは、主戦の的家だった。

年齢的にも円熟してきた的家が初めてその能力に惚れ込んだ馬だ。
一瞬の切れ味は今まで乗った馬の中では最高のものだ。
ただその最高の切れ味は、長く持つ脚ではない。
的家の中のイメージは日本刀の居合い抜きのようなここぞと言う所で一撃で仕留めるものと感じていた。

故に阪神コースや中山コースのような直線に大きな傾斜があるコースの方が相性が良いのだが、沙田は余り相性の良いコースとは言えない。
だが、芝の状況は日本寄りの為に決して悪くは無い。

プラニフォリアを管理する奥原も、リュウノラモーヌとは違うタイプの馬ながらも、沙田のコースで好勝負できると見込んで遠征を決めたのだ。

課題はもうひとつある。
プラニフォリアはホープフルステークスでの好走はあったが、ハイレベルな牡馬との対戦は初めてに近いのだ。

マイルまでの距離なら、牝馬でも十分に渡り合える馬が多い。
だが、距離が伸びクラシックディスタンスに近付くと、牡馬に中々勝てなくなってくる。
とは言え、的家はそこまでの心配は無かった。

スタートから中団に付け馬群の中へ。
まるで気配を消すように馬群の中で折り合いをつけ、コーナーを回り直線へ。
団子のようにもつれ合う直線の攻防・・・
直線半ばでゴーサインを出した的家にプラニフォリアも応え、鋭い切れ味で交わす間も無く抜き去りゴール。
2着との着差はクビだったものの、的家にしてみれば全てがハマった完璧な勝利だった。

これなら来年も国内の中長距離路線で牡馬とも戦っていけるだろう。
そんな予感すらする完勝だったのだ。

これで樹里は香港国際競争を所有馬で完全制覇。
日本では香港競馬の注目度は低いものの、これは決して小さな勝利ではなかったのだ。



そして、暮れの最後の大一番。
有馬記念が始まる。

オグリキャップの差には澪。
このコンビで引退表明したタマモクロスとの最後の戦いに挑む。

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