PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 272
 274
の最後へ

駆ける馬 274

リトルウイングのすぐ横には超良血馬アンフワイン。
人気のインディアンスキマーやムーンマッドネスは後方集団にいた。

芝の質は日本に近いが、レースの流れはヨーロッパ流でゆったりとする香港。
ペースは日本基準だと遅いぐらいだ。
逃げた馬はラビットと言われるペースメーカー役の馬だとセシリーから聞いていたので無理に逃げなかったが、ゆったりとしたペースはリトルウイングには好都合だった。

ただヨーロッパ流の遅いペースでも差し切りが多いぐらい、パワーと瞬発力はあちらの馬に利がある。
故に先行馬はいかにロス無く走るかがポイントだ。
沙田競馬場は綺麗なトラックコースで、比較的平坦な日本の競馬場に近いコースなので日本人騎手にも馴染みやすい。
しかも緯度が低いとあって、この時期でも寒く無いのが走りやすいのもある。

淡々としたペースでバックストレッチから3コーナー。
ここを過ぎると直線まで少し上り坂がある。
この辺りから後続も動き始めてくる位置だ。

後方外から一気に追い上げてきたのがムーンマッドネス。
ただこれはいつかのジャパンカップの時同様エキサイト気味。
リトルウイングはその様子を見ながら馬群の内に入れてまだ動かず。
いかに脚を溜めて直線で突き抜けられるかにかけていた。

アンフワインはリトルウイングをマークしているのか、同じような動きをとっていた。
仮に同タイミングで動いても追い比べで負けない自信が澪にはあった。

アンフワインがムーンマッドネスに煽られる形で外に出す中、澪はリトルウイングを内に切り込ませた。
インに寄せると逃げ馬と内ラチに挟まれる危険性はあるが、コーナーの遠心力で逃げ馬が膨らむ事も想定して勝負に出る。

その予想通り、やや外に膨らむ逃げ馬。
リトルウイングは内に切れ込みコーナー出口で逃げ馬と馬体を併せた。

沙田競馬場の直線は430m。
ほぼフラットに近く、スピード勝負がしやすい環境ではある。
持ったままコーナー出口で逃げ馬と並んだリトルウイングを、澪は鞭を入れゴーサインを出した。

先に抜けたのは、暴走気味のムーンマッドネス。
ただ暴走と言えどこの馬はいつもこんな感じで、更に言えばここからが粘り強い。
そこに良血馬アンフワインが食らいつく。
G1では肝心な所で惜敗するアンフワインだが、良血が持つ底力は侮れない。

逃げ馬を交わしたリトルウイングが3番手だが、脚の勢いは1番ある。
直線半ばで2番手アンフワインから1馬身、それがグングン縮まっていく。

抜け出して粘るアンフワインに馬体を併せ、リトルウイングは並ぶ間もなく一気に交わしていく。
そして半馬身ほど突き抜けたところがゴール。

いつもは大レースでも勝っても淡々としていて若手らしくないと言われていた澪だが、今回は真っ先にゴールを駆け抜けた瞬間高々と手が上がった。
リトルウイングで勝てたのは格別な気分だった。

社来ファームの送り出した良血の結晶・・・
父ノーザンテーストの不恰好な馬体と違い、流石良血馬と言う均整の取れた馬体と、非凡なスピード。
姉にダイナガールを持ち、期待されていたクラシックでは惜敗続き。
関係者全てが勝たせてやれないのが申し訳無いと言うぐらい良い馬なのだ。

生産した吉野が惜敗続きのリトルウイングに『時代が悪かったのかなぁ』と言うぐらい世代がこの馬には悪かった。
ノーザンテースト産駒に総じて言えるのが、全てにおいて一流の能力を持つ馬を多く輩出する事。
だが裏を返すと、超一流の項目を1つも持たないのも特徴と言えた。
故にリトルウイングもクラシック世代ではサクラスターオーやメリーナイスと言った世代最強の決定力を持つ馬にしてやられたし、古馬になってもタマモクロスやオグリキャップに勝てないのもその辺りだ。

それだけに海外で勝てた意味は大きい。
来年も相手は強いが、まだここで終わる馬で無いと澪も仁藤も思っている。


そんなリトルウイングで幸先良いスタートを切った香港国際競争。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す