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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 273

香港の女帝と称される毎年リーディングトップのシャロンだが、今シーズンは休養である。
これは怪我ではない。

「応援しているからね、澪」
「あ、うん・・・それは嬉しいけど・・・」

澪がそう言うシャロンに戸惑ったのは、シャロンのお腹が膨らんでいるからだ。
つまり、シャロンは妊娠で今期は休養なのだ。

「そう言えば、最近スランプ気味なのかしら?」
「ま、まあ・・・自分でもイケて無い気はするわ」

未婚のシャロンが平然と妊娠している事に色々釈然とせずモヤモヤしている澪。
聞けば彼女の母も妊娠と言うから余計に驚き戸惑っている。
ただおいそれと聞けないから、モヤモヤしながらも話題が変わった事にホッとはしていた。

そのシャロンが言う通り秋から調子を落としている澪は、リーディングトップを走る悠からも少し離されてしまっていた。
どうも騎乗にしっくり来ないと言うか、天才田沢に言わせれば『本能的に乗れていない』と言う常人には分からない状態らしい。
今回の香港でシャロンに会えば、何かヒントがあるかもと思った澪だが、まさかシャロンからこの話題が出るとは思わなかった。

「まあ、澪がメスになって、自分を持て余してるのが丸わかりだからね」
「んいっ?!なっ、何で分かるの?!」

真っ赤になってアワアワする澪に『顔に描いてあるわよと』苦笑するシャロン。
彼女にとっては心当たりもあるし、分かりすぎる理由だ。

「オトコができたんでしょ?顔に出てるわよ」
「・・・やっぱり・・・男絶ちしなきゃ駄目なのかしら?」

真っ赤から今度は落ち込む澪。
シャロンはやれやれと言いながら自分の膨らんだ腹を撫でる。

「一発孕めば折り合いつくわ・・・そのオトコにパパンと孕ませて貰いなさいな」
「ちょっ!?結婚もまだなのにっ!」

今度はまた真っ赤になる澪を面白そうに見るシャロン。
かつて彼女もそうやって母に言われて乗り越えた記憶がある。
その頃の自分も同じ顔をしていたかもしれない。

そんな2人の所に澪を探していた悠が通りかかる。

「あっ、こんな所にいたんだ」
「悠くんっ!?」

2人の表情を見て、シャロンは彼が澪をメスにしたんだと直感的に思う。

澪と悠のやりとりを見ながらニヤニヤと笑みを浮かべるシャロン。
いたっていつも通りの悠に対してシャロンの視線が気になって仕方がない澪。

「まあ、悩む必要なんてないんじゃない?スランプは一時的なものよ」
「ど、どこ見て言ってんのよ?」

慌てる澪に対して状況がわかっていない悠。
シャロンは「いずれいいことがあるわよ」と澪にエールを送りその場を後にするのだった。

そんなスランプを抱えた澪。
香港国際競争のトップバッターとして香港ヴァーズにリトルウイングで挑む。

リトルウイングも今年になってようやく大阪杯で栄冠を手にしたものの、それ以降のG1戦線では惜敗続き。
無冠の帝王から善戦マンと呼ばれて久しい。
故に環境を変える意味もあっての香港参戦だったが、幸いと言うか馬の調子は悪く無い。

相手となるのは英国のインディアンスキマー、アンプワイン、ムーンマッドネス。
実績ある馬達だ。
ただ実績あれどリトルウイングが勝負にならないかと言えばそうとも言えないレベルではある。

相手も悪くなく、馬の調子も良い。
不安があるとすれば自分自身のコンディション・・・
レース前にシャロンの母、セシリーと会った澪だが、そこで『レースが終わった夜に貴女のオトコに激しく抱かれて孕む想像すると良いわ』とアドバイスかどうか分からない言葉を貰っていた。
母娘で同じ事言うんだなあと思ったら、何故か少し心が軽くなった気はしていた。

今までの悶々とした気持ちがすっかりどこかに行った気がして、思い切ったレースが出来そう、そんな気分だった。

その澪の思いをリトルウイングも汲み取ったのかは知らないが、スタートは抜群に出た。
これまでで最高とも思えるくらい。
吹っ切れた澪はいっそ逃げてもいいとも思ったが、他に主張してきた馬がいたので好位で落ち着かせる。

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