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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 272

体力的な問題だけでなく、雄としての機能も著しく損なわれている可能性が高いらしい。

「無論、金オーナーからも余生を過ごす最大限の援助は惜しまないとは言われているが・・・」

サラブレッドは経済動物である以上、経済的に無価値となれば処分されてしまうケースが大半だ。
治療にかかった費用も莫大だが、これからも費用が嵩む一方である。
サクラのオーナーが費用を出すと言ってるものの、サクラスターオーを受け入れている樹里達に負担が無い訳ではない。

「あなたは諦めてないわね、エリック」

そう問う樹里。
エリックが何年かかろうと種牡馬として復活させるつもりがありそうなのは何となく理解していた。

「樹里が望むなら」
「なら、お願い」

本来なら牧場に馬が増えて大変になりつつあるのにどうなるかわからない死にかけの馬に割くリソースは無い筈である。
だが、それでもやりたいのはエリックのホースマンとしての矜持なのだろう。

そして樹里とエリックはその足で少し離れた馬房へ。

「彼女みたいに元気になってくれたらいいわね」
「皆が諦めなかったからこその今があるからな…それに、コイツ自身の力もだ」

シャダイソフィア。
レース中の致命的な故障で生命の危機にあったのはサクラスターオーと同じ。今の彼女は、現役時と同様とはいかないまでも馬体も回復して元気も取り戻した。

ヘンリーが主導で「実験的な意味も含まれている」種付けを行い、無事スターライトブルーの仔を受胎しているのだ。

この馬房にはソフィアだけでなく、初めての種付けで受胎したラモーヌとガーベラもいる。
きっとこれらは新しく加わるトリプティクと共にシロノホマレの牝系と並ぶ牧場の基礎になってくれるだろうとエリック達も期待していた。

「日高は良い地だ・・・良いメスが育つ」

まだ世界の競馬界において、日本は辺境の未開の地である。
だが世界的な馬産地、アイルランドと比べても遜色無いとエリックはここに住むようになって思うようになってきていた。

「サチコもマナも良いメスだ」

エリックは隣に居る真奈の膨らんでいるお腹を撫でる。
流石に五十代の幸子はお役御免となったが、真奈はここ数年に渡り毎年のようにエリックに孕まされている。
それこそ繁殖牝馬のようにだが、真奈本人は体力的な辛さがありながらも繁殖牝馬扱いを受け入れていた。

流石にポンポンと生ませたがるエリックに若干引く所のある樹里であったが、多分樹里も祐志に孕めと言われたら何人でもいいと思ってしまう自覚はある。
それだけに複雑な心境だ。

身体面と牧場業務に支障が出てはとも思うところだが、エリックと真奈の思いが一致する部分もある。

それが
「涼風ファームをこの先も維持していくこと」

自分たちが永遠にこの牧場に携わることは不可能だ。
そのためには、後継ぎとなる子供たちを送り出すことが必要なのだと。
それは樹里も十分理解している。

「血を残していくことが重要なのは、ヒトもサラブレッドも同じだ」

そうは言っても、毎年妊娠している真奈だけでなく、裕美と由紀が競い合うように、それぞれのパートナーと子作りを行って妊娠しているのとかはやり過ぎ感は感じる樹里だった。



そんな涼風ファームの日々から少し経ち、12月に入る。
アメリカではサンデーサイレンスが一般競争で暴走した挙句に2着。
これを強いと見るか厄介と見るかは難しいが、サンデーサイレンスはこの年3戦1勝で終える。
一旦休んで春先からノースウィンドと共にクラシックを目指す事になる。

そして12月の末の大レースの一つ、香港国際競争が開幕する。
本来行く予定が無かった澪だが、プチソレイユの代わりに香港ヴァーズにリトルウイングが出走する事で参加となった。
他には香港スプリントで横平騎乗のウィンドサッシュ、香港マイルで舘悠騎乗のオータムリーヴス、メインの香港カップは的家騎乗のプラニフォリアが出走と、樹里の所有馬4頭出しであった。

その中で澪は1レースだけの出走となるが、楽しみにしていたシャロンとの対戦は無い。

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