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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 269

それぞれが意識してこう言う位置取りになったと言うより、ウィンドサッシュの方がスタートが良かっただけである。
ただそれが良いとは必ずしもそうは言えない。
ウィンドサッシュの末脚の破壊力を知る横平だけに、サッカーボーイの末脚の強烈さは予想ができてしまう。
しかも騎乗するのは名手河井と来ていた。

その河井としてはスタートが良く無いのはいつも通り。
だが、リラックスして走っているのは良い事だ。
いつもはもっとカリカリしているタイプだが、今日は落ち着いて走っているのが好印象だった。

ペースはマイル戦らしく、比較的速い。
後ろの馬にとっては良い展開ではある。
無論、この展開が2頭の有力馬にとって有利であるが故に、他の騎手のマークも強い。
ホクトヘリオスやミスターボーイ、シンウインドなどは2頭の動向を見ている感があった。

そんな中、3コーナーから4コーナーに差し掛かるが、ウィンドサッシュもサッカーボーイも動かない。
完全にこの2頭は直線勝負に賭けていた。

前はミスターボーイが先頭に立ち、ヒデリュウオーがそれを追いかけ外から並んでいく。
有力どころは中団からまだ後方あたり。
サッカーボーイもウィンドサッシュもポジションは変わらないが、徐々に外めに持ち出していた。

先に抜けたのはヒデリュウオーだが、ミスターボーイが最内をキープして食い下がる。
その後ろで競り合うシンウインド、トウショウマリオ、サンキンハヤテ。

サッカーボーイとウィンドサッシュは馬体を併せながら外から一気に差を詰める。

4コーナーから大外をぶん回すように駆け上がり、横平とウィンドサッシュが加速する。
そして直線に入っての追い比べ。
次々とごぼう抜きしていくと、残り100mで先頭までぶち抜く。

凄まじいばかりの末脚で差し切るウィンドサッシュだが、上には上がいた。
そのウィンドサッシュを後ろから交わしたのはサッカーボーイだった。
弾丸シュートと称されるその鬼脚を如何なく発揮し、残り100mでウィンドサッシュに並ぶ間も無く差し切っていく。

サッカーボーイが先頭で駆け抜け、1馬身離れてウィンドサッシュもゴール。
姉弟でのワンツーフィニッシュでマイルチャンピオンシップは決したのだった。

「こちらも出せる力は出し切ったけど、弟の方がそれを上回ったね」

奥原はそう言ってウィンドサッシュと横平を労った。
馬には疲れも脚元の不安もなく、次の香港マイルがラストランとなる。

一方のサッカーボーイ。
河井曰く「坂の下りの手ごたえを見てイケると思った」と一言。

サッカーボーイは有馬記念を目指す。一気の距離延長への挑戦であり、それが成ればタマモクロスとオグリキャップの強力なライバルの出現である。

その芦毛2強。
再戦の地は府中。
ジャパンカップである。

中央移籍後、初めて負かされたオグリキャップ陣営。
打倒タマモクロスを目標に澪と陣営が考え抜いた戦術が・・・
先行策であった。

これはいくつかの理由がある。
そもそもオグリキャップにとっての武器は類い稀なる瞬発力と言うより、柔軟な筋肉と強靭な心肺機能である。
ダートの短距離馬を多く輩出するダンシングキャップ産駒であり、本質はマイラーであるオグリキャップであるが、この2つの能力によって長距離すらこなせるのが強みであった。
ただ怪物と言われつつも弱点はあり、2歳時の骨膜炎の影響から前肢に比べて後肢が未成熟で、己のパワーに後肢が追いついていない状況であったのだ。

故に澪は瀬戸内と相談し、後肢に負担をかけないようにゆっくりとしたスタートから後方待機の戦術を選んできた訳だ。
だが、加速までにやや時間のかかるオグリキャップにとって、追い込みは本来の戦術と言えないものだった。

むしろ中団より前の競馬が理想と澪は思っていた。

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