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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 266

初の芦毛対決はタマモクロスに軍配が上がった。
笑顔で引き上げる南に対し、オグリキャップ鞍上の澪は悔しくて唇を噛みながら装鞍所に戻ってきた。

「彼のベストの競馬は出来たと思います。今日は相手が強かっただけで…でも次は負けません」

いつもは負けても記者に対して丁寧に細かなところまで話す澪が、このレースに関してはそれしか言わずに去ってしまった。
それだけ悔しかったのだ。

両者の次の対決はジャパンカップ。
3着のリトルウイングは状態を見ながらそこに出走するか、有馬記念まで休ませる予定だ。


そんな天皇賞の激闘が終わった頃。
アメリカではサンデーサイレンスがメイデンで初勝利。
能力はウイッチ厩舎の誰もが認めるものの、レースぶりは傍若無人。
目一杯暴走するタイプだけに、クリスは今年はもう一戦のみにしておくつもりでいた。

その同じ週にはノースウィンドがアローワンス戦を快勝。
こちらも3戦こなしたのもあってサンデーサイレンスより一足先に休養させ、来季のクラシックに向けて調整する事になった。
主戦のクロエによると、物覚えが良く素直な性格だから、じっくり鍛えたら来年春頃には重賞でいい勝負はできるんじゃないかと期待するような口調だった。


そして日本の方ではエリザベス女王杯。
オータムリーヴスとプラニフォリアの3歳2頭とプチソレイユが出走する。
この3頭にマイルチャンピオンシップに出走予定のウィンドサッシュは暮れの香港にも登録していた。

ウィンドサッシュはその暮れの香港スプリントで引退予定。
香港ヴァーズに出走予定のプチソレイユは、どちらかで勝てたら引退させようかと言う話になっている。

引退後は涼風ファームに戻って繁殖牝馬になるので、結果はともかく無事に走り切ってほしいというのが樹里にとっても厩舎サイドにとっても第一の願いである。


まずはエリザベス女王杯。
牡馬の一線級とも差のない好レースをしてきたプチソレイユと、3歳世代のトップ、桜花賞馬オータムリーヴスとオークス馬プラニフォリア。
秋華賞ではミヤマポピーの末脚に屈した2頭にとってはここでも対戦する彼女へのリベンジの思いも強い。

タマモクロスの妹だけあって、その末脚は驚異的。
その鮮烈な勝利から、ここは1番人気に推されていた。
そのミヤマポピー以外にもシヨノロマン、アラホウトクなど3歳牝馬の層の厚さは大きい。
古馬勢はダイナアクトレスが天皇賞で引退。
有力馬ではダイナアルテミスが出走するものの、小粒感は否めない。


そんなレースは2番人気、古馬のリーダー格プチソレイユが大方の予想通り逃げる。
鞍上は主戦に納まった感がある熊崎。
オークスで騎乗したコスモドリームが休養で不出走とあって、ここに賭ける思いは強い。

それに続くのはシヨノロマンと澪。
5番手程の所にオータムリーヴス、10番手辺りにはアラホウトクやプラニフォリア。
ミヤマポピーは最後方のグループに位置した。

想定内の展開。
澪もプチソレイユの逃げを邪魔する気は無いからスローなペースでレースが始まる。
先行勢にとっては理想の展開。
後ろの馬にとっては、仕掛け所を考えねばいけない展開と言えた。

澪はプチソレイユで向こう正面から一気に仕掛けて押し切った昨年のレースを思い出す。
思い切って行ってもいいが、シヨノロマンの脚質にはその戦法は合わないと考えていた。
加えて、昨年一緒になって動いていったユウミロクが同日の福島記念に出走していて不在。

オータムリーヴスの悠はそのシヨノロマンの後ろで脚を溜める。

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