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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 265

タマモクロスの先行策は意外だったが、オグリキャップの脚なら差し切れる自信はある。
それ故に澪は直線まで我慢を選んだ。

そしてタマモクロスのすぐ後ろの河井。
ゆっくりと外側からタマモクロスに馬体を合わせていく。
チラリと南の様子を伺う河井・・・
小さな馬格と極端な追い込み戦術。
河井は恐らくタマモクロスは馬群が苦手だと見ていた。
勿論、不利な情報は厩舎サイドが徹底的に隠すから想定でしかないが、長年の勘からそれは間違い無いと思っていた。
逆にリトルウイングは馬体を合わせた方が良いタイプだし、末脚勝負では負けるもののスピードではそこまで劣っているとは思っていない。

そんな河井の厭らしい戦術は南も理解している。
正直嫌な気分ではある。
タマモクロスは過去、調教時に馬群に囲まれて事故を起こしており、それ故に馬群を極端に嫌がる。
それが出世が遅れた理由でもあり、極端な追い込み戦術の元でもある。
だが、今のタマモクロスはその弱点を克服しつつある。

軽快に逃げるレジェンドテイオー。
毎日王冠は発走直前の不慮のアクシデントでの競走除外で、その鬱憤を晴らすかのように気分良く走っていた。

因縁の相手であるシリウスシンボリは今回も出走していたがトラブルは起こらずに済んだ(なお毎日王冠の後には担当厩務員同士の喧嘩があったとか…)

そのレジェンドテイオーを2番手で追うタマモクロスがじわじわと差を縮めてくる。
3番手のリトルウイングはそのタマモクロスを見ながら…河井は離れたコースをとるか、敢えて馬体を併せに行くか、少し考えていた。

少し考えたが答えは多くない。
やはり併せて競るのが最適解だろう。

タマモクロスも先行すれば、あの稲妻のような差し脚は使えまい。
競り合う根性までは解らないが、リトルウイングに関してはそこが強みでもある。
故にタマモクロスにピッタリと馬体を併せながらコーナーを回る。
南は表情にこそ出さないが、長年の付き合いで嫌がっているのは分かる。
無論こうなる事は理解していない訳ではないだろうが、それでもこの戦術を選んだ辺り、余程オグリキャップの脚が怖いのだろう。

そのオグリキャップは2人の遥か後ろ。
大欅を過ぎて、後方集団の中に混じって上がってきている。
後は河井はタマモクロスより仕掛けを早くするか遅らせるか・・・
コーナー出口から直線に入り、そのチャンスを伺っていた。

レジェンドテイオーがスタミナも十分に逃げるが、追いかけるタマモクロスもリトルウイングも余力十分。
ほぼ同時に2頭の鞭が入る。
やはりと言うか、タマモクロスに稲妻のような加速力は無い。
だが、グングンとレジェンドテイオーに迫り差し切る。
そして、リトルウイングも馬体を併せてそれに続いた。

粘り込みを図るレジェンドテイオーに並んで、そして交わしていくタマモクロス。
それに馬体を併せて並びかけるリトルウイング。
直線半ばで3頭の激しい追い比べが繰り広げられる。
4番手以降が少し離される格好。

リトルウイングが交わそうとするとタマモクロスが抵抗するようにぐいっと伸びる。
いつもの手ごたえではないものの力はあるのは明らかだし、ここからがしぶとい。
しかしそれにあっさり負けるリトルウイングではない。
両者の追い比べが続く。

その頃大外からオグリキャップはスパートを開始、前との差を一気に縮めていく。

その脚は凄まじい。
毎日王冠で見せた鬼脚そのもので一気に詰めていく。
残り100mで2頭に追いつく。
先頭タマモクロス、半馬身差でリトルウイング。
そこに割って入るオグリキャップ。
だが、オグリキャップの脚なら差し切れるだろうと誰もが思うぐらい、その追い込みは凄まじい勢いだった。

誰もがオグリキャップの勝利を疑わなかった。
河井ですらやられたと覚悟した。
そんな中で、南だけがタマモクロスを信じていた。
わざわざ先行策を取ったのも、その為だったのだ。

南が鞭を呻らせ、更に追う。
既に限界かに見えたタマモクロスがグイッと伸びる。
猛追するオグリキャップの勢いが落ちたのかと誤解するぐらい、タマモクロスの伸びだったのだ。
そのまま交わされる事無くゴール。
むしろ猛追するオグリキャップやリトルウイングを突き放してのゴール・・・
澪も信じられないものを見るような気持ちで先に駆け抜けたタマモクロスを見たのだ。

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